介護記録の書き方|事実と解釈の分け方と保存期間
公開 2026年8月23日
目次8項目
- 1介護記録が求められる理由
- 介護記録は誰のために書くのか
- 介護記録と業務日誌は役割が違う
- 2介護記録は事実と解釈を分けて書く
- 「拒否」「不穏」を言い換える
- 解釈は「考察」として分けて書く
- 3介護記録に書く項目
- 数値は数値のまま書く
- サービス提供の記録は計画と対応させる
- 申し送りと記録を二重に書かない
- 記録の様式に空欄を作りすぎない
- 4介護記録を書くタイミング
- メモから起こす形にすると続く
- 家族から開示を求められたとき
- 5介護記録の訂正と、電子記録での注意
- 電子記録では、誰がいつ書いたかを残す
- 6介護記録の保存期間
- 起算する日を決めておく
- 7介護記録を職員間で揃える
- 書く量の目安を決めておく
- 記録の読み合わせを月に1回行う
- 新しく入った職員には見本を渡す
- 8介護記録で実地指導に見られるところ
- 変化が無い日の書き方
介護記録を書くとき、何をどこまで書けばよいのかで迷うことがあります。
一般には、その日の出来事を短く1〜2行でまとめている事業所が多くあります。ところが実地指導で記録を求められたとき、サービスの内容が読み取れないという理由で指摘を受ける例があります。
ポイントはここです。介護記録は、日記ではなくサービスを提供した証拠として読まれます。
ここでは、介護記録に書く内容と、事実と解釈の分け方、書くタイミング、保存期間を、実務の順に整理します。
介護記録が求められる理由
介護記録は、運営基準がサービス提供の記録として作成と保存を求めているものです。
介護保険は、提供したサービスに対して報酬が支払われる仕組みです。何をどれだけ提供したかを示せるのは記録だけなので、記録が薄いと提供そのものが確認できないと扱われます。
- 5年完結の日から保存(自治体による)
- その日記録を書くタイミング
- 事実と解釈分けて書く2つの層
この3つのうち、いちばん崩れやすいのは書くタイミングです。
翌日にまとめて書くと細部が抜け落ち、結果として似たような記録が並ぶことになります。
書く時間を勤務の中に組み込んでいる事業所では、記録の量も中身も安定する傾向があります。
終業前の15分を記録の時間として決めておくと、残業にもならず、その日のうちに書き終えられます。
介護記録は誰のために書くのか
介護記録の読み手は、3者います。
| 読み手 | 何を見るか |
|---|---|
| 事業所の職員 | 前回どうだったか、次に何をするか |
| 利用者と家族 | どう過ごしているか |
| 市町村・審査 | サービスを提供したか、計画どおりか |
3者で見たいものが違うため、どれか1つに寄せると他が読めなくなります。事実を先に書き、判断を後ろに置く形にすると、3者とも必要な部分だけを拾えます。
家族に見せる前提で書くと、専門用語が減って読みやすくなります。
一方で、職員どうしの申し送りに必要な情報まで落ちてしまうことがあるため、用語には短い注記を添える形が扱いやすくなります。
介護記録と業務日誌は役割が違う
介護記録と業務日誌は、混同されやすい記録です。
介護記録は利用者ごとに縦に積む記録で、業務日誌は事業所の1日を横に見る記録です。片方だけを付けている事業所では、利用者ごとの経過か、その日の全体像のどちらかが追えなくなります。
事故が起きたときに突き合わせるのは、この2つです。
利用者の記録に「15時20分」とあり、業務日誌に「15時に職員1名が休憩へ」とあれば、そのときの体制が読み取れます。
介護記録は事実と解釈を分けて書く
介護記録でいちばん差が出るのは、事実と解釈が混ざっているかどうかです。
「不穏だった」と書かれた記録からは、何が起きたのかが読み取れません。見たこと・聞いたことを先に書き、そこから考えたことを後ろに置くと、読んだ人が同じ判断をたどれます。
読み取れない書き方
- 不穏だった
- 拒否があった
- 状態が悪い
- いつもどおり
- 対応した
読み取れる書き方
- 15時ごろから同じ話を繰り返された
- 入浴の声かけに「今日はいい」と応じられた
- 朝から食欲がなく、朝食を3割残された
- 前日と同様、日中は居室で過ごされた
- 職員2名で見守り、居室へ誘導した
右の欄は、どれも見たままを書いているだけです。
言い換えに手間はかからず、時刻と数を足すだけで、後から読む人が状況を再現できるようになります。
慣れるまでは、書いたあとに「これは見たことか、考えたことか」と自分に問う形が使えます。
考えたことであれば、考察の欄に移すだけで記録の質が上がります。
「拒否」「不穏」を言い換える
介護記録でよく使われる言葉のうち、言い換えたほうがよいものがあります。
| よく使う言葉 | 言い換えの例 |
|---|---|
| 拒否 | 「今日はいい」と応じられた/首を横に振られた |
| 不穏 | 同じ話を繰り返された/立ち上がりを繰り返された |
| 徘徊 | 廊下を往復して歩かれた |
| 暴言 | 「うるさい」と大きな声で言われた |
| 傾眠 | 声かけに反応が薄く、目を閉じている時間が長い |
言い換えの要は、評価の言葉を、見た動作に戻すことです。
評価の言葉は書き手によって基準が違うため、同じ「不穏」でも指す状態が変わります。
言い換えの一覧を事業所で作り、記録の様式の裏に印刷しておく方法があります。
新しく入った職員が同じ言葉を使えるようになると、記録全体の読み味がそろいます。
解釈は「考察」として分けて書く
事実だけを並べると、なぜその対応をしたのかが伝わりません。
考察の欄を分けて設け、そこに書き手の判断を書きます。事実の欄に判断が混ざらなければ、後から別の職員が違う見立てをすることもできます。
考察は毎回書かなくても構いません。
変化があった日、対応を変えた日、家族から相談があった日に書く、と決めておくと負担が偏りません。
介護記録に書く項目
介護記録に書く項目は、時刻・場面・様子・対応・考察の5つが基本になります。
| 項目 | 書くこと |
|---|---|
| 時刻 | 何時何分の出来事か |
| 場面 | 食事・入浴・排せつ・レクなど |
| 様子 | 見たこと、聞いたこと、数値 |
| 対応 | 職員が何をしたか、何名で行ったか |
| 考察 | そこから考えたこと、次にどうするか |
- 1 時刻 15:20
- 2 場面 入浴の声かけ
- 3 様子 「今日はいい」と応じられた
- 4 対応 30分後に再度声かけ、応じられた
- 5 考察 直後の再声かけより時間を置くほうが応じやすい
この順に並べると、記録が1本の線になります。
考察を最後に置いているのは、事実を読んでから判断に進む形にするためです。
数値は数値のまま書く
介護記録に数値が入ると、後から比べられるようになります。
食事は割合、水分は量、体重は数字で書きます。「よく食べられた」より「主食10割・副食8割」のほうが、翌週と比べたときに変化が見えます。
数値は、後から集めて折れ線にできる形にしておくと使えます。
体重や食事量の変化は、1週間では気づけず、1か月並べてはじめて見えることが多くあります。
サービス提供の記録は計画と対応させる
サービス提供の記録は、計画に位置づけた内容と対応しているかが見られます。
計画に無いことだけが記録されていると、計画が実態と合っていないことになります。計画を見直すか、記録の書き方を変えるか、どちらかで揃えておくと、実地指導で説明がつきます。
モニタリングのときに、記録と計画を突き合わせる形にしておくと揃います。
計画の項目ごとに、その月の記録から根拠を1つ拾えるかを見ると、ずれている項目が見つかります。
申し送りと記録を二重に書かない
介護記録と申し送りを別々に書いている事業所では、同じ内容を2回書くことになります。
申し送りのノートに書いた内容を、そのまま記録に転記する運用にすると手間が半分になります。転記のときに時刻と数値を足せば、記録としての体裁も整います。
二重に書く運用が続くと、どちらかが省略されていきます。省略されるのは、たいてい後から書く記録のほうです。
記録の様式に空欄を作りすぎない
介護記録の様式に欄が多すぎると、埋まらない欄が並びます。
空欄が続く記録は、確認していないのか該当が無いのかが読み取れません。使われていない欄は、年に1度見直して減らす形にすると、記録が締まります。
欄を減らすときは、法令や計画で求められている項目が落ちていないかを確認します。
介護記録を書くタイミング
介護記録は、その日のうちに書く形が広く行われています。
翌日にまとめて書くと、時刻が思い出せず「午前中」「夕方」といった書き方になります。時刻が曖昧な記録は、事故が起きたときに経過を追えません。
帯が短くなるほど、後から読んだときに使えない記録になります。
その場で書くのが難しい場面は多いので、勤務の終わりまでに書くという線を事業所で決めておくと、記録の質が揃います。
メモから起こす形にすると続く
介護記録をその場で書けない場合は、手元のメモから起こす形が扱いやすくなります。
メモには時刻と単語だけを残し、記録の作成時に文章にします。メモを残す紙を職員が持っている事業所では、時刻の抜けが少なくなる傾向があります。
メモそのものは記録ではないため、書き起こしたあとは処分して構いません。
ただし事故が起きた日のメモは、経過を確かめる材料になるので、報告書を出し終えるまで残しておくと安全です。
家族から開示を求められたとき
介護記録は、利用者本人や家族から開示を求められることがあります。
求められてから慌てないよう、開示の手続きを重要事項説明書に書いておく形が一般的です。誰に申し出るか、いつまでに出すか、費用がかかるかを決めておきます。
開示を前提に書くと、記録の言葉づかいが自然に整います。読まれて困る書き方をしていないかは、書いた本人が気づきやすい部分です。
介護記録の訂正と、電子記録での注意
介護記録を書き間違えたときは、元の記載が読める形で訂正する方法が一般的です。
紙の記録では、二重線を引いて訂正印を押します。修正液や塗りつぶしは、元の記載が読めなくなるため避けられています。
- 紙の記録か はい二重線+訂正印 いいえ次へ
- 訂正の履歴が残る仕組みか はいそのまま訂正してよい いいえ次へ
- 上書きで消える仕組みか はい訂正の記録を別に残す いいえ設定を確認
元の記載が後から読めるかどうかが、訂正の方法を分ける
判断の分かれ目は、元の記載が後から読めるかどうかです。
読めなくなる方法をとると、書き換えたのではないかという疑いを晴らせなくなります。
電子記録では、誰がいつ書いたかを残す
電子記録に移した事業所では、記載者と記載日時が残る設定になっているかを確認しておくと安全です。
共有のアカウントで全員が入力している事業所では、誰が書いたかが分からなくなります。職員ごとのアカウントにしておくと、後から確認できます。
端末を持ち歩く運用にしている事業所では、ログアウトの徹底も併せて決めておく形が広く行われています。
別の職員の名前で記録が残ると、事故の検証のときに経過が追えなくなります。
介護記録の保存期間
介護記録の保存期間は、完結の日から5年間としている自治体が多くあります。
年数は市町村の条例で定められており、2年としている自治体もあります。所管の市町村の条例を確認したうえで、事業所の運用を決める形になります。
同じ記録でも自治体で年数が違うため、帯の長さがそろいません。
複数の市町村から利用者を受け入れている事業所では、いちばん長い年数に合わせて保管しておくと、判断を毎回しなくて済みます。
起算する日を決めておく
保存期間の起算は、完結の日からとされていることが一般的です。
完結の日をいつと見るかは、サービスの終了日とする事業所が多くあります。利用者ごとにファイルを分け、終了日を表紙に書いておくと、処分の判断がつきます。
電子で保存している場合も、終了日を項目として持っておくと同じことができます。
終了から5年を過ぎたものを一覧で出せる形にしておくと、年に1度の整理で済みます。
介護記録を職員間で揃える
介護記録は、書く人によって濃さが変わりやすい記録です。
同じ利用者の記録が、担当によって3行になったり10行になったりすると、経過を追うときに濃淡が邪魔をします。
揃っていない事業所
- 書く量が人で2倍以上違う
- 同じ場面で使う言葉が違う
- 時刻を書く人と書かない人がいる
- 考察を書く人が限られている
揃っている事業所
- 1件あたりの目安を決めている
- 言い換えの一覧を共有している
- 時刻は全員が分単位で書く
- 考察を書く場面を決めている
右側は、どれも様式を変えずにできることです。
決め事を3つほど共有するだけで、記録の読み味がそろってきます。
書く量の目安を決めておく
介護記録の量は、事業所で目安を決めておくと揃います。
「1日あたり3行以上」「変化があった日は5行以上」といった線を引くと、極端に短い記録が減ります。多く書くこと自体が目的にならないよう、上限は決めない形が扱いやすくなります。
目安は、新しく入った職員にとっての基準にもなります。どれくらい書けばよいかが分からないまま数か月過ごす、ということが減ります。
記録の読み合わせを月に1回行う
介護記録を職員間で揃えるには、読み合わせの場を持つのが良いです。
その月の記録から数件を選び、事実と解釈が分かれているか、時刻が入っているかを全員で見ます。指摘する場ではなく、良い書き方を共有する場にすると続きます。
読み合わせで出た言い換えは、一覧に足していきます。事業所ごとの言葉づかいが、この積み重ねで固まっていきます。
帯が長いものほど、書き方の違いが早く縮まります。
口頭の説明が弱いのは、聞いた人が自分の書き方に当てはめられないためです。
新しく入った職員には見本を渡す
介護記録の書き方は、口で説明するより見本を見せるほうが早く伝わります。
過去の記録から、事実と解釈が分かれている良い例を数件選んでおきます。個人が特定できる部分を伏せれば、研修の材料として使えます。
見本は年に1度、入れ替えます。古い見本のまま使い続けると、その後に変えた書き方が反映されません。
介護記録で実地指導に見られるところ
介護記録で実地指導に見られるのは、量ではなく中身です。
毎日書かれていても、同じ文が並んでいる記録は、実際に見て書いたのかを確認されます。
| 見られるところ | どう見えるか |
|---|---|
| 同じ文が続いている | 転記しているのではないか |
| 時刻が無い | いつの出来事か分からない |
| 計画と対応していない | 計画が実態と合っていない |
| 職員名が無い | 誰が対応したか分からない |
| 空欄が続いている | 提供していないのではないか |
確認を受けやすい記録
- 「特変なし」だけが並ぶ
- 時刻が無い
- 書いた職員が分からない
- 計画に無いことだけが書かれている
説明のつく記録
- 変化が無い日もその根拠が書いてある
- 時刻が分単位で入っている
- 記載者が分かる
- 計画の項目と対応している
左右で、書く量はほとんど変わりません。
違うのは、時刻と記載者と、計画との対応が入っているかどうかだけです。
変化が無い日の書き方
介護記録で悩ましいのが、変化が無い日です。
「特変なし」だけでは、見たうえで変化が無かったのか、見ていないのかが分かりません。食事量・排せつ・睡眠のうち1つでも数値を残しておくと、確認したことが伝わります。
変化が無い日が続くこと自体は、悪いことではありません。
安定して過ごせている根拠が残っていれば、状態が落ちたときに「いつから変わったか」を示せます。
様式は介護記録テンプレートとサービス提供記録からダウンロードできます。事故が起きたときの記録は介護事故報告書の書き方で整理しています。
よくある質問
介護記録は手書きとパソコン入力のどちらがよいですか。
どちらでも構いません。手書きは書いた人がすぐ分かる一方、後から探しにくくなります。パソコン入力は探しやすい代わりに、誰がいつ書いたかの記録が残る設定になっているかを確認しておくと安全です。実地指導では形式ではなく、記載の中身が見られます。
書き間違えたときは修正液を使ってもよいですか。
紙の記録では、二重線を引いて訂正印を押す形が一般的です。修正液や塗りつぶしは、元の記載が読めなくなるため避けられています。電子記録の場合は、訂正の履歴が残る仕組みになっているかを確認しておくと確実です。
介護記録は何年保存すればよいですか。
完結の日から5年間としている自治体が多くあります。ただし年数は条例で定められており、2年としている自治体もあります。所管の市町村の条例をご確認ください。