介護事故報告書の書き方|報告の範囲と再発防止

公開 2026年8月23日

目次8項目

介護事故報告書を書くとき、どこまで書けばよいのかで迷うことがあります。

一般には、起きたことと処置を1枚にまとめている事業所が多くあります。ところが市町村に提出したあとで、原因の分析が足りないという理由で差し戻される例があります。

ポイントはここです。介護事故報告書は、報告するための書類ではなく再発を防ぐための書類として読まれます

ここでは、介護事故報告書に書く項目と、報告が必要になる範囲、原因の分析、再発防止策の書き方を、実務の順に整理します。

介護事故報告書が求められる理由

介護事故報告書は、運営基準が作成と保存を求めている記録です。

基準が求めているのは、連絡・措置・記録・再発防止の4つです。報告書はこの4つをまとめた文書になります。

  • 当日中報告書を書き始める
  • 5年記録の保存(自治体による)
  • 3か月後再発防止策の実行を確認
介護事故報告書でおさえる3つの時点

この3つのうち、抜けやすいのは3か月後の確認です。

対策を決めた記録は残っていても、実行されたかを見返す仕組みが無い事業所が多くあります。

委員会の議題に「前回の対策の実行状況」を毎回置いておくと、自然に確認する形になります。

決めた対策が現場で回らなかった場合も、その理由が分かれば次の対策を変えられます。

事故報告書とヒヤリハット報告書の違い

介護事故報告書とヒヤリハット報告書は、書く目的が違います。

事故報告書は起きてしまったことを報告する文書で、ヒヤリハット報告書は起きなかったことを集める文書です。

同じ様式で兼ねている事業所もありますが、分けたほうが集まりやすくなります。報告した人が責められる心配のない形にできるためです。

事故報告書は書く項目が多く、1件あたりの負担が大きくなります。

ヒヤリハットに同じ手間をかけると報告が止まるため、様式を分ける事業所が増えています。

介護事故報告書に書く項目

介護事故報告書に書く項目は、事実・処置・分析・対策の4層に分かれます。

書く項目
事実発生日時、場所、利用者の情報、事故の種別
事実経過(時刻の順)
処置応急処置、受診の結果、連絡した先と時刻
分析原因(人ではなく仕組み)
対策再発防止策、担当、開始時期
対策事業所内での検討、周知
  1. 1 発見 状態確認・応援を呼ぶ
  2. 2 処置 応急処置・救急要請の判断
  3. 3 連絡 家族へ第一報(受診より前)
  4. 4 受診 医療機関で確認
  5. 5 報告 市町村へ・期限は要綱による
  6. 6 検討 委員会で原因分析
  7. 7 確認 3か月後に実行状況
介護事故報告書は、この流れの記録として書く

この流れの3番目、家族への第一報が受診より前に置かれている点が要になります

受診の結果を待ってから連絡すると、家族は「何時間も知らされなかった」と受け取ります。

第一報で伝えるのは、いつ・どこで・何が起きたか、今どうしているか、これからどうするかの5つです。

原因や責任には触れず、分かっていることだけを伝える形にすると、後の説明と食い違いません。

経過は時刻の順に、見た事実だけを書く

介護事故報告書の経過欄は、時刻の順に並べる形が読みやすくなります。

経過に書くのは、見た事実だけです。転倒の瞬間を見ていない場合は「発見時、床に座り込んでおられた」と書きます。

「立ち上がろうとして転倒した」と書くと、見ていない動作を書いたことになります。後から利用者の話と食い違うと、報告書全体の信頼が下がります。

見ていない部分は、空白のままでも構いません。

「発見までの経過は確認できていない」と書いておくほうが、推測で埋めるより正確な記録になります。

連絡した先と時刻を全部書く

連絡の欄は、先と時刻を対にして書くと経過が追えます。

家族、居宅介護支援事業所、市町村、医療機関。誰にいつ何を伝えたかが並んでいると、対応が遅れていないことを示せます。

連絡がつかなかった場合も、かけた時刻を残しておくと経過が追えます。

緊急連絡先を2件以上もらっておく運用にしている事業所では、この欄が空白になりにくくなります。

利用者間のトラブルの扱い

介護事故報告書で判断に迷うのが、利用者どうしのトラブルです。

負傷が生じた場合は事故として扱う事業所が一般的で、負傷が無くても繰り返している場合は記録に残します。相手方の氏名を報告書に書くかどうかは、自治体の様式によって扱いが分かれます。

繰り返している場合は、席の配置や過ごす場所を分ける対応が取られます。

対応を変えた記録が残っていると、次に何かが起きたときに事業所として手を打っていたことを示せます。

家族への説明では、相手方が特定できる書き方を避ける形が広く行われています。個人情報の取扱いに関わるためです。

送迎中の事故は別の手続きも要る

送迎中の交通事故は、介護の事故報告に加えて保険の手続きが並行します。

警察への届出、保険会社への連絡、家族への連絡、市町村への報告。この4つが同時に走るため、担当をあらかじめ決めておくと動けます。

車両の損害と利用者の負傷は別々に扱われるため、記録も分けて残しておくと後の手続きが早くなります。

送迎の記録に、その日の同乗者と経路を残しておくと経過が追えます。

誰がどの席に座っていたかまで分かると、負傷の状況と突き合わせられます。

介護事故報告書で市町村への報告が必要な範囲

介護事故報告書のうち、市町村への提出が必要になる範囲は自治体で分かれます。

死亡と、医療機関での治療を要する負傷は共通して対象になります。分かれるのは、軽微な負傷や、利用者間のトラブル、無断外出をどこまで含めるかという部分です。

  1. 死亡したか はい報告(即日連絡を求める自治体あり) いいえ次へ
  2. 医療機関で治療を受けたか はい報告 いいえ次へ
  3. 所在が分からなくなったか はい多くの自治体で報告 いいえ次へ
  4. 要綱に該当する項目があるか はい報告 いいえ事業所内の記録として保存

最後の分岐は自治体ごとに違う。所管の要綱を書き写しておくと迷わない

市町村への報告が必要かの判断

いちばん下の分岐だけが、自治体で中身が変わります。

要綱の該当部分をマニュアルに書き写しておくと、事故のたびに調べ直さずに済みます。

複数の市町村から利用者を受け入れている事業所では、要綱が複数になります。

利用者ごとにどの市町村へ報告するかを台帳に書いておくと、迷う時間が減ります。

第一報と最終報告を分ける

介護事故報告書は、第一報と最終報告の2回に分けて出す形が一般的です。

第一報は分かっている範囲で早く出し、原因分析と再発防止策は最終報告に回します。事実確認が終わるのを待って第一報が遅れるほうが、問題として扱われます。

最終報告の期限を定めていない自治体もあります。

その場合も1か月を目安に出しておくと、後から求められて慌てることがありません。

介護事故報告書の原因は仕組みで書く

介護事故報告書で差し戻されやすいのは、原因の欄です。

「職員の確認不足」で止めると、再発防止策も「確認を徹底する」になります。同じ対策を何度書いても、同じ事故が起きます。

差し戻されやすい原因

  • 職員の確認不足
  • 利用者の不注意
  • 見守りが行き届かなかった
  • 一時的に目を離した

対策につながる原因

  • 入浴時間帯は職員2名で7名を介助しており、移動時に付き添える体制でなかった
  • 脱衣室から廊下への出口に段差があり、濡れると滑りやすかった
  • 床面の水気を確認する手順が入浴の手順書に無かった
  • 同じ時間帯に別の利用者の対応が重なる配置になっていた
人で止めるか、仕組みまで掘るかで、次に打てる手が変わる

右の欄は、どれも変えられるものを指しています。

人の注意力は変えられませんが、配置・設備・手順は変えられます。

原因を仕組みに落とすと、担当者が代わっても対策が残ります。

人に紐づけた対策は、その人が異動した時点で消えてしまいます。

なぜを一段掘る

原因を仕組みに落とすには、なぜ確認できなかったのかを一段掘る形が使えます。

人が足りなかったのか、動線が悪かったのか、手順に項目が無かったのか。変えられるものにたどり着くまで掘ると、対策が具体的になります

4つの側面から見る

原因を1つに絞らず、複数の側面から見ると漏れが減ります。

側面見るところ
利用者心身の状況、その日の体調、これまでの経過
職員人数、経験、その時間帯の負担
環境床、照明、動線、用具の状態
手順手順書の有無、計画との対応、周知

4つのうち、対策を打ちやすいのは環境と手順です。

利用者の状態は変えられず、職員の増員はすぐにはできないため、まず動線と手順から見ると現実的な対策になります。

介護事故報告書の再発防止策

介護事故報告書の再発防止策は、いつから何をするかまで書く形が求められます。

「注意します」では、実行されたかを誰も確認できません。何を変えるのか、誰が担当するのか、いつから始めるのかを書きます。

  • 設備を変える 90効果が続く
  • 配置を変える 75人数が要る
  • 手順を変える 65周知が要る
  • 注意を促す 20時間で薄れる
再発防止策の種類と、効果の続きやすさの目安

帯が長いものほど、人が入れ替わっても効果が残ります。

注意喚起だけの対策が弱いのは、伝えた相手が辞めると同時に消えるためです。

設備を変える対策は費用がかかりますが、一度入れれば人が入れ替わっても効きます。

費用がすぐに出せない場合は、暫定として手順を変え、次年度に設備で置き換える、という順序が現実的です。

3か月後に実行を確認する

再発防止策は、決めた時点ではまだ効いていません。

3か月後に実行されているかを確認する欄を報告書に設けておくと、決めっぱなしを防げます。確認した結果も記録に残しておくと、次の実地指導で示せます。

実行されていなかった場合は、対策そのものを見直します。

現場で回らない対策を書き続けるより、回る形に変えるほうが再発の防止につながります。

報告書を書く人と確認する人を分ける

介護事故報告書は、当事者だけで完結させない形が広く行われています。

当事者が経過を書き、管理者が原因と対策を書く。この分担にすると、当事者の記憶が新しいうちに事実を残しつつ、分析は落ち着いて行えます。

書いた人と確認した人の欄を分けておくと、事業所として確認した記録になります。

当事者が動揺している場面では、聞き取りを別の職員が行う形もあります。

その場合は、聞き取った人の氏名と日時を残しておくと、経過が後から追えます。

介護事故報告書を書くときに迷いやすいところ

介護事故報告書を書き慣れていないと、判断に迷う場面がいくつか出てきます。

多くは「これは事故に当たるのか」「どこまで書くのか」という線引きの話です。

迷いやすい場面

  • 受診したが異常なしだった
  • 本人が転倒を否定している
  • 職員が見ていない時間帯だった
  • 家族が報告を望んでいない
  • 利用者どうしの接触だった

実務での扱い方

  • 受診した事実を書き、結果も書く
  • 本人の説明と、見た事実を分けて書く
  • 見ていないことを、見ていないと書く
  • 市町村への報告は家族の意向で変えない
  • 負傷が生じたら事故として扱う
迷ったときは、事実を残す側に寄せると後で説明がつく

右側に共通しているのは、隠さずに書くという点です。

書かなかった事実が後から出てくるほうが、事業所にとって不利に働きます。

受診して異常が無かった場合

介護事故報告書は、受診の結果が異常なしでも作成する形が一般的です。

受診したという事実自体が、事業所が判断して動いた記録になります。異常が無かったことも書いておくと、その後に症状が出たときの経過が追えます。

市町村への報告が必要かどうかは要綱によります。治療を要したかどうかで分かれるため、受診の内容を医療機関に確認しておくと判断がつきます。

家族が報告を望まない場合

介護事故報告書のうち、市町村への報告は事業所の義務として行うものです。

家族が「大ごとにしないでほしい」と言われることがありますが、報告の要否は家族の意向では変わりません。報告する旨をあらかじめ伝えておくと、後の説明が穏やかに進みます。

伝え方としては、事業所の決まりとして報告していること、報告が不利益につながるものではないことを添える形が広く行われています。

職員が見ていない時間帯の書き方

介護事故報告書で難しいのが、誰も見ていない場面です。

見ていないことは、見ていないと書きます。発見時の状況、その直前に職員がどこで何をしていたか、最後に確認したのは何時かを書くと、経過の推測ができます。

最後に確認した時刻を書く欄を様式に入れておくと、この場面で書き漏れません。

介護事故報告書の保存と、あとから見返す形

介護事故報告書は、書いて提出したら終わりではありません。

保存期間は完結の日から5年としている自治体が多く、その間に何度か見返す機会があります。

  • 事故の記録 5年 多くの自治体
  • 苦情の記録 5年 同上
  • 身体拘束の記録 5年 同上
  • 委員会の議事録 3年 事業所により
事故に関わる記録の保存期間(自治体により異なる)

帯の長さが違うため、同じ棚にまとめると処分の判断がつかなくなります。

事故報告書は、委員会の記録や再発防止の確認記録と一緒に綴じておくと、経過が1か所で追えます。

年に1度、まとめて見返す

介護事故報告書は、1件ずつ見ているだけでは傾向が見えません。

年度末に1年分を並べ、場所・時間帯・場面で分類すると、重なっているところが浮かびます。転倒が入浴前後に集中している、といったことは、まとめて見てはじめて分かります。

分類した結果は、次年度の事故防止計画の材料になります。

同じ利用者で繰り返していないか

介護事故報告書を利用者ごとに並べると、繰り返しが見つかります。

同じ方が3か月に2回転倒している場合、その方の計画そのものを見直す材料になります。事故報告書は事業所の記録であると同時に、その利用者の経過の記録でもあります。

ケアマネジャーと共有し、サービス担当者会議の議題に載せる形が広く行われています。

実地指導で示せる形にしておく

介護事故報告書は、実地指導で確認される書類の1つです。

報告書・委員会の記録・再発防止の確認記録の3点がそろっていると、事業所として取り組んでいることを示せます。報告書だけがファイルにある状態では、検討したかどうかが読み取れません。

3点を1件ずつクリップでまとめておく事業所もあります。探す時間が減り、説明も早くなります。

  1. 1 事故報告書 事実と処置
  2. 2 委員会の記録 原因分析と対策
  3. 3 確認の記録 3か月後の実行状況
3点をまとめて綴じると、事故1件の経過が1か所で追える

3点がそろっていると、検討したことまで示せます。

報告書だけがファイルにある状態では、対策を決めたかどうかが読み取れません。

介護事故報告書と家族への説明

介護事故報告書と、家族への報告文は分けて作る形が扱いやすくなります。

市町村への報告書は原因分析と再発防止策が中心で、家族への報告文は経過と今後の対応が中心になります

市町村への報告書家族への報告文
中心になるもの原因分析と再発防止策経過と今後の対応
事実の部分同じ内容にする同じ内容にする
提出の期限要綱による事実が固まってから
渡し方所定の窓口へ対面で説明して渡す

事実の部分を同じにしておくと、後から食い違いが出ません。

先に事実を確定させ、そこから2つの文書を起こすという順序にすると、書き直しが減ります

説明した日と相手を控えに残す

家族へ報告文を渡したときは、渡した日と相手の氏名を控えに残しておくと確認できます。

後から「そんな説明は受けていない」となったときに、確認できるのは記録だけです。渡した場に同席した職員の氏名も残しておくと確実です。

家族が遠方にお住まいで対面が難しい場合は、郵送のうえ電話で説明する形もあります。

その場合も、送った日と電話で話した内容を記録に残しておくと、経過が追えます。

様式は介護事故報告書テンプレート市町村への事故報告書からダウンロードできます。対応の手順は事故発生時の対応マニュアルにまとめています。

よくある質問

打撲や擦り傷でも市町村に報告が必要ですか。

自治体によって扱いが分かれます。死亡や医療機関での治療を要する負傷は共通して対象になりますが、軽微な負傷をどこまで含めるかは要綱で定められています。所管の市町村の要綱をご確認ください。

事故報告書はいつまでに提出すればよいですか。

5日以内としている自治体が多くありますが、死亡事故は即日の連絡を求める自治体もあります。第一報を早く出し、原因分析と再発防止策は後から最終報告として出す形が一般的です。

家族に報告する内容と、市町村に報告する内容は同じでよいですか。

事実の部分は同じにしておくと食い違いが起きません。家族への報告は経過とお詫び、今後の対応が中心になり、市町村への報告は原因分析と再発防止策まで求められる点が違います。

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