介護のバイタル記録の書き方|基準値と異常時の動き
公開 2026年9月3日
目次8項目
- 1介護のバイタル記録とは何を残す記録か
- その日の判断に使う
- 変化を追う土台になる
- 感染症の広がりを早く見つける
- 2介護のバイタル記録に書く項目
- 測る条件を固定する
- 日課の時刻を決める
- 本人の訴えも書く
- 3介護のバイタル記録の基準の範囲をどう決めるか
- ふだんの数値を先にためる
- 範囲を様式の欄外に書く
- 疾患による違いを押さえる
- 4介護のバイタル記録で異常があったときの動き
- 再測定の手順を決める
- 伝える経路を時間帯で決める
- 伝えた記録を残す
- 5介護の体重管理表とバイタル記録のつなぎ方
- 体重の減少に気づく基準を決める
- 測る条件をそろえる
- 食事の記録と並べて見る
- 6介護のバイタル記録を誰が測るか
- 測れる行為の範囲を確認する
- 伝えるまでが役割と決めておく
- 看護職がいない時間帯を決めておく
- 研修で測り方をそろえる
- 7介護のバイタル記録でつまずきやすいところ
- 前回の数値が見える様式にする
- 測り忘れの日を残す
- 機器の点検も記録する
- 8介護のバイタル記録を変化に気づく形にする
- 受診のときに記録を持って行く
- 発熱が重なった日を拾う
- 月ごとに見る担当を決める
バイタルを毎日測っていても、数値が並ぶだけで終わることがあります。36.8度という数字が、その方にとって高いのか普通なのかが分からないためです。ふだんが35.9度の方であれば、変化が起きています。
一般には、ふだんの数値を把握したうえで、その日の値と比べます。一律の基準だけを見ると、その方の変化が拾えません。
とはいえ、ふだんの数値は記録がたまってはじめて分かります。
ポイントはここです。介護のバイタル記録は、その方のふだんの数値と比べることで判断に使える記録になります。
ここでは、何を残す記録なのか、書く項目、基準の範囲の決め方、そして変化に気づく形にするところまでを順に整理します。
介護のバイタル記録とは何を残す記録か
介護のバイタル記録は、体温、血圧、脈拍といった数値を残す記録です。その日の判断に使うことと、変化を追うことの2つの役割があります。
- 体温発熱と感染の兆し
- 血圧循環の状態
- 脈拍不整と負荷
測る項目は、本人の疾患と経過によって決まります。
呼吸の回数や酸素の値を測る方もいます。そのうえで、看護職や医師の指示で項目が加わることがあります。
その日の判断に使う
入浴してよいか、運動してよいか、外出してよいか。その日の判断に、バイタルの数値が使われます。
そのため、判断が要る場面の前に測ります。入浴の前、機能訓練の前、外出の前。
測った後に判断できる形にしておくと、動きが早くなります。
変化を追う土台になる
1回の数値だけでは、判断が難しい場面があります。数日から数週間の推移を見ると、傾向が見えます。
ふだんの数値が記録に残っていると、離れたことに気づけます。
血圧が徐々に上がってきている、体温がいつもより高い日が続いている。そのうえで、他の記録と合わせて見ると原因が絞れます。
感染症の広がりを早く見つける
複数の方に発熱が出ている場合、感染症の可能性があります。1人だけを見ていると、広がりに気づけません。
そのため、発熱があった方を日ごとに数える形にします。そのうえで、同じフロアに集まっていないかも見ます。
早く気づけると、対応も早くなります。
介護のバイタル記録に書く項目
介護のバイタル記録には、数値だけでなく測った条件も残します。条件が違うと、数値の意味も変わるためです。
- 1 測定の時刻 朝か夕か
- 2 数値 体温・血圧・脈拍
- 3 測った条件 安静後か動いた後か
- 4 本人の様子 訴えと見た目
- 5 対応 伝えたか経過を見たか
数値だけの記録だと、後から比べたときに条件が違います。そのうえで、様子と対応まで書いておくと経緯が追えます。
| 項目 | 書き方 | 気をつけるところ |
|---|---|---|
| 体温 | 小数第1位まで | 測った部位も決めておく |
| 血圧 | 上と下の両方 | 測った腕を固定する |
| 脈拍 | 回数と不整の有無 | 不整があれば印を付ける |
| 呼吸 | 回数 | 必要な方だけ |
| 酸素の値 | 数値 | 機器の種類を決めておく |
| 測定の時刻 | 分まで | 日課の時刻を決める |
右の列は、条件をそろえるための決めごとです。そのうえで、様式の欄外に書いておくと迷いません。
測る条件を固定する
血圧は、測る腕によって値が違うことがあります。体温も、脇と耳では出る数値が変わります。
そのため、その方について測る条件を決めておきます。右腕で測る、脇で測る、座位で測る。
条件が変わると、前回と比べられません。
動いた直後に測ると、脈拍も血圧も上がります。そのため、安静にしてから測る時間も決めておきます。
やむを得ず条件を変えた場合は、その旨を記録に書きます。「歩行の直後に測定」と書いてあれば、読む側が判断できます。
日課の時刻を決める
測る時刻がばらばらだと、日をまたいで比べられません。血圧は1日の中でも変動します。
そのため、朝は何時ごろ、夕方は何時ごろと決めておきます。そのうえで、日課の流れの中に組み込みます。
朝食の前、入浴の前、といった形にすると忘れません。
本人の訴えも書く
数値が範囲内でも、本人が不調を訴えることがあります。だるい、頭が痛い、いつもと違う感じがする。
数値が範囲内でも、本人の訴えは記録に残します。
介護のバイタル記録の基準の範囲をどう決めるか
基準の範囲は、一律に決めると合わない方が出ます。その方のふだんの数値から決める形にします。
- ふだんの数値が分かっているか はい次へ いいえ2週間ほど記録をためる
- 看護職と範囲を決めたか はい次へ いいえ相談して決める
- 様式に範囲を書いたか はい次へ いいえ欄外に書き入れる
- 伝える相手と経路を決めたか はい判断できる形になっている いいえ経路を決める
ふだんの数値がないと、離れたことに気づけない
4つを順に進めると、判断できる形になります。そのうえで、最初のふだんの数値がすべての土台になります。
ふだんの数値を先にためる
新しく入所した方については、ふだんの数値が分かりません。2週間ほど記録をためると、おおよその範囲が見えてきます。
そのうえで、その範囲を基準として置きます。一律の基準は、目安として併記しておきます。
たまるまでは、一般的な範囲で判断します。
範囲を様式の欄外に書く
基準の範囲が担当者の頭の中にあると、他の人が判断できません。記録の様式に、その方の範囲を書いておきます。
「体温 35.8〜36.6」「血圧 上110〜135」。そのうえで、範囲を外れたときに誰に伝えるかも書きます。
その場で判断できる形になります。
疾患による違いを押さえる
高血圧の治療をしている方、心疾患のある方、糖尿病のある方。疾患によって、見るべき範囲が変わります。
そのため、看護職や主治医と相談して決めます。そのうえで、服薬の影響も確認しておきます。
血圧を下げる薬を飲んでいる方は、低い値にも注意が要ります。
介護のバイタル記録で異常があったときの動き
範囲を外れた数値が出たとき、すぐに伝えるのではなく再測定を挟みます。測り方や条件で、値が変わることがあるためです。
- 1 再測定 条件を変えて測り直す
- 2 本人の様子 訴えと見た目を見る
- 3 看護職へ 数値と様子を伝える
- 4 判断 受診か経過観察か
- 5 記録 伝えた時刻と結果
再測定は、時間を置いて行います。そのうえで、それでも範囲を外れていれば伝えます。
再測定の手順を決める
何分後に測り直すか、条件をどう変えるかを決めておきます。5分安静にしてから測る、別の腕で測る。
そのうえで、再測定の値も記録に残します。1回目と2回目の両方が残っていると、経過が分かります。
明らかに高い値や、本人の様子が悪い場合は、再測定を待たずに伝えます。
伝える経路を時間帯で決める
日中は看護職、夜間は当直、休日は電話。時間帯ごとに、誰に伝えるかを決めておきます。
伝える経路を時間帯ごとに決めておくと、夜間でも止まりません。
そのうえで、つながらなかった場合の次の手も決めます。救急要請の判断基準も、あわせて決めておきます。
伝えた記録を残す
誰に、何時に、何を伝えたか。そのうえで、どう返ってきたかも書きます。
「経過を見る」「1時間後にもう一度測る」「受診の手配をする」。指示の内容が残っていると、次の職員が引き継げます。
伝えたのに記録がないと、伝えていないのと同じ扱いになります。
夜間に伝えた場合は、翌朝の申し送りでも共有します。そのうえで、その後の経過も記録に残します。
一度伝えて終わりにせず、変化を追います。
介護の体重管理表とバイタル記録のつなぎ方
バイタルと体重は、測る周期が違います。それぞれの周期で見ると、拾えるものが変わります。
バイタルは日ごとの変化を、体重は月ごとの変化を映します。そのうえで、2つを並べると状態の見方が広がります。
体重の減少に気づく基準を決める
「1か月で2キロ以上減ったら伝える」といった基準を決めます。基準があると、その場で判断できます。
そのうえで、割合で見る方法もあります。もとの体重が違うと、同じ2キロでも意味が変わります。
低栄養の兆しとして、早く拾える基準にしておきます。
測る条件をそろえる
体重は、測る時間帯や服装で変わります。朝食前、同じ服装、同じ体重計。
そのうえで、条件を記録の様式に書いておきます。条件が変わると、比べられません。
車いすのまま測る場合は、車いすの重さも決めておきます。
食事の記録と並べて見る
体重が減っているとき、食事量も減っていることがあります。2つを並べると、原因が見えます。
そのうえで、水分の量も一緒に見ます。体重の変化には、水分の増減も影響します。
同じ用紙にまとめるか、隣に置く形にします。
介護のバイタル記録を誰が測るか
バイタルの測定は、介護職員が行える行為です。一方で、数値の意味を判断するのは看護職や医師になります。
介護職員が担う部分
- 決められた条件で測る
- 数値を記録に残す
- 本人の様子を書く
- 範囲を外れたら伝える
看護職が担う部分
- 基準の範囲を決める
- 数値の意味を判断する
- 受診の必要を判断する
- 医師へつなぐ
左は、決められたとおりに行う部分です。一方で右は、判断が入る部分になります。
測れる行為の範囲を確認する
体温、血圧、脈拍の測定は、一定の条件のもとで介護職員が行えます。使う機器や、対象になる方の状態に条件があります。
そのため、自事業所で行える範囲を確認しておきます。そのうえで、判断に迷う場合は看護職に確認します。
条件が変わることもあるため、定期的に確認します。
伝えるまでが役割と決めておく
数値を見て、大丈夫かどうかを介護職員が判断すると、見落としが出ます。範囲を外れたら伝える、という形にしておきます。
伝えるまでが役割と決めておくと、判断で迷いません。
看護職がいない時間帯を決めておく
夜間や休日に看護職がいない事業所があります。このときに誰に伝えるかを決めておきます。
オンコールの看護職、協力医療機関、救急要請。そのうえで、それぞれの基準も決めておきます。
決まっていないと、朝まで持ち越されます。
研修で測り方をそろえる
同じ方を測っても、職員によって値が違うことがあります。測り方や、機器の使い方が違うためです。
そのため、年に1回は測り方を確認する機会を作ります。そのうえで、新しく入った職員には個別に伝えます。
測り方がそろうと、数値の信頼が上がります。
介護のバイタル記録でつまずきやすいところ
介護のバイタル記録が判断に使えるかどうかは、比べられる形になっているかで決まります。数値が並ぶだけの記録だと、その日の判断にしか使えません。
判断に使える形
- ふだんの数値が分かる
- 範囲が様式に書いてある
- 前回と並べて見える
- 伝える経路が決まっている
書きためるだけの形
- 数値が並ぶだけ
- 範囲が人の頭の中
- 前回が見えない様式
- 誰に伝えるか毎回迷う
左は、その場で判断できる形です。一方で右は、記録があっても使われません。
前回の数値が見える様式にする
1日1枚の様式だと、前回の数値が見えません。1か月分を1枚にまとめると、並べて見られます。
そのうえで、範囲を外れた値に印を付ける形にします。数字が並ぶ中で、目に留まりやすくなります。
電子で入力する場合も、直近の数値が見える画面にします。
測り忘れの日を残す
測れなかった日を空欄にすると、忘れたのか測らなかったのかが分かりません。拒否があった、外出していた、体調が悪くて測れなかった。
そのため、理由を1行書いておきます。そのうえで、次に測ったときの値と併せて見ます。
空欄が続いていると、傾向が読めなくなります。
測定を拒否される方については、その理由も記録します。腕を締めつけられるのが嫌、慣れない機器が怖い。
そのうえで、測り方を変えると受け入れられることがあります。別の職員が声をかける、時間帯を変える。
拒否の記録が集まると、対応の手がかりになります。
機器の点検も記録する
体温計や血圧計が正しく動いていないと、数値が信頼できません。電池の残量、表示の異常、校正の時期。
機器の点検を記録に残しておくと、数値の信頼が保てます。
複数の機器を使っている場合は、機器ごとに番号を付けておきます。そのうえで、どの機器で測ったかを記録に残す方法もあります。
機器による差が疑われるときに、確かめられます。
介護のバイタル記録を変化に気づく形にする
介護のバイタル記録は、見る幅によって拾えるものが変わります。その日、週ごと、月ごと。それぞれで見えるものが違います。
月ごとの傾向は、担当を決めて見る形にします。
その日の判断は自然に行われますが、月ごとの傾向は誰かが見ないと拾えません。
受診のときに記録を持って行く
医師に状態を伝えるとき、数値があると話が早く進みます。「最近血圧が高いようです」より、実際の数値のほうが伝わります。
そのため、直近の記録を印刷して持って行きます。そのうえで、気になる部分に印を付けておきます。
家族が受診に付き添う場合は、家族に渡す形にします。
医師からの指示があれば、その内容も記録に残します。そのうえで、基準の範囲を変える必要があれば直します。
受診の結果が記録に戻ってくると、次の判断に使えます。
発熱が重なった日を拾う
複数の方に発熱が出た日を、拾える形にしておきます。1人分の記録を見ているだけでは、重なりに気づけません。
そのため、全員分を一覧で見られる形にします。そのうえで、発熱があった方の人数を日ごとに数えます。
同じ日に複数出ていれば、感染症を疑う材料になります。
月ごとに見る担当を決める
月に1度、1人分の記録を通して見る担当を決めます。数分で読める作業です。
そのうえで、気づいたことを申し送りやカンファレンスで伝えます。血圧が上がってきている、体温が高めの日が増えている。
見る人が決まっていないと、誰も見ないまま溜まります。
様式はバイタル記録表テンプレート、体重管理表からダウンロードできます。
よくある質問
バイタルは毎日測る必要がありますか。
サービスの種類と本人の状態によって変わります。通所では利用のたびに、入所では日課として測る形が広く使われています。疾患があって経過を見ている方は回数を増やし、安定している方は頻度を下げるという個別の決め方が扱いやすくなります。
基準の範囲は誰が決めるのですか。
看護職と相談して個別に決める形が一般的です。ふだんの数値が人によって違うため、一律の基準では判断できません。その方のふだんの数値と、看護職に伝える範囲を記録の様式に書いておくと、担当が代わっても判断がそろいます。
介護職員が測ってよいのですか。
体温や血圧、脈拍の測定は、一定の条件のもとで介護職員が行える行為として整理されています。判断や医療的な処置は含まれません。測った数値をもとに看護職へつなぐという役割の分け方を、事業所で決めておくと迷いません。