介護の非常災害対策計画|避難訓練記録の残し方

公開 2026年9月3日

目次8項目

避難訓練を日中に行い、職員が全員そろった状態で実施している事業所があります。実際に災害が起きるのは、夜勤者が2人しかいない時間帯かもしれません。そのときに動ける計画になっているかが、問われる部分です。

一般には、想定する災害を決め、役割と経路と移動の方法を書きます。日中の人数で作った計画は、夜間には使えません

とはいえ、少ない人数での避難は簡単ではありません。だからこそ、平時に決めておく意味があります。

ポイントはここです。介護の非常災害対策計画は、いちばん人が少ない時間帯を前提に作ります

ここでは、何を決める計画なのか、書く項目、避難訓練の回し方、そして年に1回の見直しまでを順に整理します。

介護の非常災害対策計画とは何を決める計画か

介護の非常災害対策計画は、災害が起きたときに利用者の安全を確保する計画です。運営基準で、作成と訓練の実施が求められています。

  • 誰が役割の分担
  • どこへ避難の場所と経路
  • どうやって移動の方法
非常災害対策計画は、誰が・どこへ・どうやってを決める

このうち、移動の方法がいちばん難しい部分になります

自力で歩けない方をどう運ぶかが、実際の場面では課題になります。

想定する災害を書き出す

地震、火災、風水害、土砂災害。どの災害を想定するかは、事業所の場所によって変わります。

そのため、ハザードマップで自事業所の位置を確認します。浸水想定区域、土砂災害警戒区域に入っていないか。

入っている場合は、その災害を重点的に想定します。そのうえで、想定される浸水の深さも確認します。

1階が浸水する想定なら、上階への避難が中心になります。建物の外へ出るのか、中で上に上がるのかで、計画が変わります。

避難の場所を2つ以上決める

指定された避難所が使えないことがあります。道路が寸断された、すでに満員だった、そこも被災した。

避難の場所を2つ以上決めておくと、片方が使えなくても動けます

消防計画と内容をそろえる

消防法にもとづく消防計画と、非常災害対策計画は別の文書です。一方で、火災についての内容は重なります。

役割の分担、避難の経路、通報の手順。そのうえで、内容が食い違っていると、当日に迷います。

同じ内容は同じ書き方にしておきます。

消防計画を作るときに消防署と相談した内容は、非常災害対策計画にも反映しておきます。

そのうえで、どちらかを直したときは両方を確認します。

介護の非常災害対策計画に書く項目

介護の非常災害対策計画は、発見から避難後までを時間の順に並べます。その場面で何をするかが、上から読んで分かる形になります。

  1. 1 発見と通報 誰が何をするか
  2. 2 初期消火 火災の場合
  3. 3 避難の誘導 順序と経路
  4. 4 安否の確認 人数を数える
  5. 5 関係先へ連絡 家族と市町村
  6. 6 避難後の生活 BCPにつなぐ
発見から避難後まで、時間の順に並べる

最後の「避難後の生活」から先は、BCPが引き継ぎます。そのうえで、2つの計画がつながる形にしておきます。

項目内容気をつけるところ
想定する災害地震・火災・風水害地域の特性で決める
役割の分担通報・消火・誘導夜間の人数で決める
避難の場所一次と二次2つ以上決める
避難の経路図で示す各フロアに掲示
移動の方法車いす・シーツ搬送用具の保管場所
備蓄水と食料と衛生用品数量と期限
連絡先職員と関係先別紙にする

右の列は、実務でつまずきやすい点です。そのうえで、連絡先は別紙にしておくと更新が楽になります。

夜間の人数で役割を決める

日中は10人いても、夜間は2人という事業所があります。2人で通報、消火、誘導のすべてを担うことになります。

そのため、優先する順序を決めておきます。まず何をして、次に何をするか。

そのうえで、応援を呼ぶ経路も決めておきます。近隣の職員、法人内の他事業所、近隣の住民。

避難の順序を決める

全員を同時に避難させることはできません。どの方から動かすかを決めておきます。

火元に近い方、自力で動ける方、車いすの方、寝たきりの方。そのうえで、居室の配置と合わせて順序を考えます。

順序が決まっていると、迷う時間がなくなります。

経路の図を各フロアに貼る

避難の経路を文章で書いても、その場では読めません。図にして、各フロアの見える場所に貼っておきます。

経路を図で貼っておくと、応援に来た人でも動けます

夜間に応援に来た職員は、その建物の配置を知らないことがあります。そのうえで、非常口の位置と、鍵の場所も書いておきます。

図があると、説明する時間が要りません。

介護の避難訓練をどう回すか

避難訓練は、運営基準で実施が求められています。回数はサービスの種類によって変わります。

  • 避難訓練 6か月 年に複数回の場合がある
  • 夜間想定の訓練 12か月 年に1回以上
  • 通報訓練 6か月 消防への通報
  • 計画の見直し 12か月 年に1回
訓練と見直しの周期(月数で比較)

自事業所に求められる回数を確認して、年間の予定に入れます。そのうえで、内容が毎回同じにならないようにします。

条件を変えて行う

毎回同じ想定で行うと、手順を覚えるだけの訓練になります。条件を変えると、計画の抜けが見つかります。

火元を変える、時間帯を変える、経路の一部を使えなくする。そのうえで、当日まで職員に伝えない形にする方法もあります。

うまくいかない訓練のほうが、得られるものが多くなります。

夜間を想定して行う

実際に夜間に訓練を行うのは難しい場合があります。そのときは、日中に夜間の人数で行う形にします。

参加する職員を2人に絞り、他の職員は見学に回ります。そのうえで、暗い中での移動も想定します。

2人で何人まで避難させられるかが、実際にやると分かります。

計画に書いた人数で動けないことが分かったら、計画を直します。避難の順序を変える、応援を呼ぶ基準を早める、用具を増やす。

そのうえで、次の訓練で確かめます。

かかった時間を測る

訓練のときに、避難完了までの時間を測ります。数字があると、次回と比べられます。

そのうえで、どこで時間がかかったかも見ます。特定の居室、階段、点呼の場面。

時間が長い部分に、改善の余地があります。

介護の避難訓練記録に書くこと

避難訓練の記録は、実施したことを示す資料になります。そのうえで、次の訓練の材料にもなります。

  1. 実施の日時と想定を書いたか はい次へ いいえ災害の種類と時間帯を書く
  2. 参加者を名前で残したか はい次へ いいえ氏名か記号で残す
  3. かかった時間を測ったか はい次へ いいえ次回から測る
  4. 見つかった課題を書いたか はい記録として使える いいえ振り返りを書く

課題まで書くと、次の訓練につながる記録になる

避難訓練記録が使える形かの確認

4つのうち、最後が抜けやすい部分です。実施したことだけを書くと、次につながりません。

想定を具体的に書く

「火災を想定した訓練」だけだと、どういう状況だったか分かりません。どこから出火したか、時間帯はいつか、何人体制だったか。

そのうえで、使えないことにした経路も書きます。条件が書いてあると、次回に別の条件を選べます。

同じ想定を繰り返していることにも気づけます。

参加者を名前で残す

参加した職員を、氏名で残します。人数だけだと、誰が参加していないかが分かりません。

そのうえで、参加できなかった職員には別の機会を作ります。夜勤明けや休みの職員が、毎回抜けることがあります。

年間で全員が参加できているかを確認します。

利用者の参加についても記録します。実際に移動してもらったのか、説明だけだったのか。

そのうえで、参加した利用者の様子も書いておきます。不安が強かった方については、当日の対応を考える材料になります。

見つかった課題を次につなげる

訓練で見つかった課題を、記録に書きます。「車いすがすぐに出せなかった」「非常口の鍵が固かった」。

そのうえで、いつまでに誰が直すかも書きます。書いておくと、次の訓練までに手が入ります。

課題を次の訓練の想定にすると、計画が育ちます

前回の課題が解決したかを、次の訓練で確かめる形にします。そのうえで、記録に「前回の課題の確認」という欄を作っておきます。

介護の非常災害対策で地域と連携する

夜間の少ない人数では、事業所だけで避難を完了させるのは難しくなります。地域の協力が要る場面があります。

  • 近隣の住民 5避難の手伝い
  • 自治会 4連絡と調整
  • 近隣の事業所 4避難先や人の応援
  • 消防団 3訓練への参加
  • 法人内の他事業所 4職員の応援
連携の相手と、期待できる協力の大きさ

平時に顔を合わせておくことが、当日の協力につながります。

頼む内容を具体的に決める

「協力をお願いします」だけでは、当日に何をすればよいか分かりません。何人来てほしいか、何をしてほしいかを決めておきます。

車いすを押す、荷物を運ぶ、避難先まで案内する。そのうえで、連絡の方法も決めておきます。

具体的だと、相手も引き受けやすくなります。

訓練に参加してもらう

計画に書いただけでは、当日に動けません。訓練に参加してもらう形にすると、実際の動きが確かめられます。

自治会の防災訓練に合わせて行う方法もあります。そのうえで、事業所の訓練に来てもらう形もあります。

参加してもらうと、建物の配置も知ってもらえます。

地域の側にとっても、事業所の状況を知る機会になります。どういう方が何人いるか、どういう手助けが要るか。

そのうえで、災害時に地域の避難先として使ってもらう関係もあります。一方的に助けてもらう形より、続きやすくなります。

連携の内容を計画に書く

決めた内容を、計画に書いておきます。相手の名前、連絡先、頼む内容。

そのうえで、年に1回は内容を確認します。自治会の役員が代わっていることがあります。

書いてあっても、相手が知らなければ動きません。

介護の非常災害対策計画とBCPの分け方

介護の非常災害対策計画とBCPは、どちらも災害を扱います。時間の軸で分けると、整理がつきます。

非常災害対策計画

  • 発生から避難まで
  • 安全の確保が中心
  • 経路と誘導の順序
  • 消防計画と重なる

BCP

  • 避難の後から復旧まで
  • 業務を続けることが中心
  • 優先業務と人の手当て
  • 感染症の側もある
避難までと、その後で分かれる

左が先で、右が後になります。そのうえで、2つがつながる形にしておきます。

時間の順で分ける

災害が起きて、避難を完了するまでが非常災害対策計画です。避難した先で、どうサービスを続けるかがBCPになります。

この区切りを決めておくと、どちらに何を書くかが決まります。そのうえで、両方の文書に同じ内容を書かずに済みます。

区切りが曖昧だと、同じことが2か所に書かれます。

重なる部分は片方に書く

安否確認の方法、職員の連絡先、備蓄の一覧。これらは両方に関わります。

別紙にして、両方から参照する形にします。そのうえで、更新は1回で済みます。

別紙には版数と更新日を入れておきます。

訓練は続けて行う

避難訓練とBCPの訓練は、続けて行えます。避難したところから、そのまま業務の継続に移ります。

そのうえで、記録は分けて残します。どちらの訓練だったかが分かる形にしておきます。

年間の予定に、この組み合わせを入れておきます。

介護の非常災害対策で備蓄をどう決めるか

備蓄の数量は、人数と日数から計算します。「3日分」とだけ決めても、実際に足りるかは分かりません。

  • 人数利用者と職員の合計
  • 日数何日分を持つか
  • 種類水・食料・衛生用品
人数×日数から、必要な数量が決まる

計算した数量を、計画に書いておきます。そのうえで、実際に置いてある数と突き合わせます。

職員の分も数に入れる

災害のときは、職員も帰宅できないことがあります。利用者の分だけを備蓄していると、職員の分が足りません。

職員の分も数に入れておくと、当日に足りなくなりません。

何日分を持つか決める

3日分を目安とする事業所が多くなっています。一方で、地域によっては支援が届くまでにもっとかかることがあります。

そのため、地域の想定を確認して決めます。そのうえで、保管の場所が確保できる範囲で考えます。

置き場所が足りない場合は、分散して置く方法もあります。

期限の入れ替えを予定に入れる

備蓄には期限があります。入れ替えの時期を管理表に入れておきます。

そのうえで、期限が近いものから日常で使う形にすると無駄が出ません。入れ替えた分を補充する流れも決めておきます。

年に1回、期限を確認する日を決めておきます。

保管の場所を分ける

1か所にまとめていると、そこが使えなくなったときに全部が失われます。複数の場所に分けて置いておきます。

そのうえで、避難先でも使えるように一部を持ち出せる形にします。持ち出し用の袋を作っておく方法があります。

保管の場所は、計画に書いておきます。

介護の非常災害対策計画を年に1回見直す

介護の非常災害対策計画は、作った時点の状況で書かれています。人も利用者も地域も変わるため、年に1回は見直します。

  1. 1 訓練の課題 見つかった抜け
  2. 2 職員の異動 役割の分担
  3. 3 利用者の変化 避難に要する手
  4. 4 地域の変化 連携の相手
  5. 5 計画に反映 版を上げる
訓練の課題と人の変化を、年に1回まとめて反映する

4つの変化を確認して、最後に計画へ反映します。そのうえで、見直した記録も残しておきます。

利用者の変化を反映する

自力で歩けた方が、車いすになっていることがあります。避難に要する手の数が変わります。

避難に要する手を数え直すと、役割の分担が変わります

職員の異動を反映する

役割を担っていた職員が退職すると、その役割が空きます。氏名で書いていると、毎回の異動で計画を直すことになります。

そのため、役割は職種や役職で書き、氏名は別紙にします。そのうえで、別紙だけを差し替える形にします。

新しく入った職員には、役割を説明します。

版を上げて古い分を回収する

見直した計画には、版数と改訂日を入れます。古い版が現場に残っていると、違う内容で動くことになります。

そのうえで、古い版は回収します。各フロアに貼った図も、同じタイミングで差し替えます。

変えた箇所を伝えると、読み直す負担が減ります。

様式は非常災害対策計画テンプレート避難訓練記録からダウンロードできます。避難後の業務は業務継続計画(BCP)にまとめています。

よくある質問

避難訓練は年に何回行うのですか。

消防法にもとづく訓練と、運営基準にもとづく訓練が重なる形になっています。施設の種類によって回数の定めが違い、年に2回以上とされている場合があります。所轄の消防署と、指定を受けた自治体の基準の両方を確認しておくと漏れません。

夜間を想定した訓練は必要ですか。

夜間は職員が少なく、避難がもっとも難しい時間帯になります。夜間を想定した訓練を行う形が求められている場合があり、実際に少ない人数で動いてみると計画の抜けが見つかります。日中の訓練だけだと、当日に動けません。

地域との連携はどう書くのですか。

避難に協力してもらえる先を具体的に書く形が扱いやすくなります。近隣の住民、自治会、事業所といった相手と、頼む内容を決めておきます。日ごろの行事や訓練で顔を合わせておくと、当日に協力を頼めます。

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