介護の看取りに関する指針|同意の取り方と記録

公開 2026年9月3日

目次8項目

看取りの同意書を入所のときに1度取って、そのままになっている。そういう形だと、状態が変わったときに本人の意向と合わなくなります。気持ちは変わるものだからです。

一般には、元気なうちから意向を聞き、状態が変わるたびに確かめ直します。1回で決めた同意は、そのときの気持ちでしかありません

とはいえ、何度も話を持ちかけるのは、家族にとって負担にもなります。だからこそ、いつ誰がどう聞くかを決めておきます。

ポイントはここです。介護の看取りに関する指針は、1回で決めないという前提で作ります

ここでは、何を決めるものなのか、指針に書くこと、意思の確かめ方、そして看取りの後の職員の支えまでを順に整理します。

介護の看取りに関する指針とは何を決めるものか

介護の看取りに関する指針は、施設としての姿勢と、看取りの手順を定めた文書です。本人と家族に示すものでもあります。

  • 考え方施設としての姿勢
  • 手順誰が何をするか
  • 記録何を残すか
指針は、考え方・手順・記録の3つで組む

誰が何をするかまで書いておくと、当日に迷いません

考え方だけを書いた指針は、実際の場面では使えません。そのうえで、記録の様式まで決めておくと動きが早くなります。

加算の要件と結びついている

看取り介護加算や、ターミナルケア加算を算定する場合、指針の作成が要件になります。そのうえで、本人や家族への説明と同意も求められます。

要件はサービスの種類と加算の区分によって変わります。そのため、自事業所が算定する加算の要件を確認しておきます。

要件を満たしていないと、返還の対象になります。

加算を取らない場合も持つ意味がある

加算を算定しない事業所でも、看取りの場面は起こります。そのときに、職員が何をすればよいかが決まっていないと動けません。

指針があると、職員の判断がばらつきません

医療との関係を書いておく

介護の事業所だけでは、看取りは進められません。医師の判断、看護職の関与、急変したときの対応。

そのため、協力医療機関との取り決めを指針に書きます。そのうえで、どこまでを事業所で行い、どこから医療に渡すかを決めます。

境目が曖昧だと、当日に判断が止まります。

介護の看取りに関する指針に書くこと

介護の看取りに関する指針は、平時の意思の確認から看取りの後までを1つの文書に収めます。場面ごとに別の文書があると、必要なときに探すことになります。

  1. 1 基本の考え方 施設としての姿勢
  2. 2 意思の確認 元気なうちから
  3. 3 説明と同意 本人と家族へ
  4. 4 体制 職種の役割
  5. 5 医療との連携 連絡の経路
  6. 6 看取りの後 振り返りと支え
平時の意思の確認から、看取りの後までを1つの文書に

この順に書いておくと、時間の流れに沿って読めます。そのうえで、最後の「看取りの後」まで含めておきます。

項目書く内容気をつけるところ
基本の考え方施設としての姿勢短く、家族にも示せる形で
意思の確認いつ誰がどう聞くか繰り返すことを書く
説明と同意何をどう説明するか同意書の様式も決める
体制職種ごとの役割夜間の体制も
医療との連携連絡の経路時間帯ごとの連絡先
記録残す項目様式を決める
看取りの後振り返りと支え職員のケアも書く

右の列は、実務でつまずきやすい点です。そのうえで、連絡先は別紙にしておくと更新が楽になります。

繰り返し確かめることを書く

意思の確認を1回で終わりにしない、と指針に明記します。書いておかないと、同意書を取った時点で済んだ扱いになります。

状態が変わったとき、入院から戻ったとき、家族の状況が変わったとき。そのうえで、確かめる場面を具体的に挙げておきます。

書いてあると、職員から話を持ちかけやすくなります。

夜間の体制を書く

看取りの場面は、夜間に来ることがあります。そのときに動ける体制になっているかが問われます。

夜勤者が何をするか、誰に連絡するか、応援を呼ぶ基準は何か。そのうえで、看護職が不在の時間帯の扱いも決めておきます。

日中の体制だけを書いた指針は、実際には使えません。

家族に示せる形にする

指針は、内部の文書であると同時に、家族に示すものでもあります。専門的な言葉が並んでいると、読んでもらえません。

家族に示せる形にしておくと、入所の相談のときにも使えます。

施設として何ができて、何ができないかを先に伝えられます。そのうえで、家族の側も心づもりができます。

入所のときに伝えておくと、後から食い違いが出にくくなります。

介護の看取りで本人の意思をどう確かめるか

本人の意思を確かめる方法は、状態によって変わります。話せる状態であれば、本人から聞くのが基本です。

  1. 本人が話せる状態か はい本人から聞く いいえ次へ
  2. 以前に聞いた記録があるか はい記録を家族と確認 いいえ次へ
  3. 家族が本人の意向を知っているか はい家族から聞く いいえ次へ
  4. 医療の側も含めて話し合えるか はい繰り返し話し合う いいえ関係者を集める

元気なうちに聞いておいた記録が、いちばん確かな材料になる

本人の意思を確かめる順序

その記録がないと、家族の推測に頼ることになります

推測で決めた内容は、後から家族の間で意見が分かれることがあります。そのうえで、決めた家族に重い負担が残ります。

元気なうちから聞いておく

看取りが近づいてから聞くと、本人も家族も冷静に考えられません。入所のときや、状態が安定している時期に聞いておきます。

「もしものときに、どこで過ごしたいか」「何を大事にしたいか」。そのうえで、答えられない場合は無理に聞きません。

聞こうとした事実も、記録に残しておきます。

本人の言葉のまま残す

要約すると、聞いた側の解釈が入ります。「延命は望まない」と要約すると、何を指しているかが曖昧になります。

「痛いのは嫌だ」「最後まで自分の口で食べたい」。そのうえで、そのときの様子や、誰が聞いたかも書きます。

言葉のまま残っていると、後から読む人が判断できます。

雑談の中で出た言葉も、意向を示していることがあります。「あの人みたいに苦しむのは嫌だな」といった一言です。

そのうえで、日々の記録に書いておきます。まとまった聞き取りの場でなくても、材料になります。

変わったら書き直す

気持ちは変わります。前に言っていたことと違うことを言う場面があります。そのときに、前の記録を消さないようにします。

前の記録を消さずに足すと、変化そのものが情報になります

介護の看取りで家族と話し合う場の持ち方

家族との話し合いは、時期によって扱う内容が変わります。それぞれの場面で何を話すかを決めておきます。

  • 入所のとき 1 施設の考え方を伝える
  • 状態が変わったとき 3 意向を確かめ直す
  • 看取りが近いとき 6 具体の希望を聞く
  • 看取りの後 12 振り返りを共有する
話し合いの場(時期の並び)

4つの場面それぞれで、記録を残します。そのうえで、参加した家族と、伝えた内容を書いておきます。

入所のときに考え方を伝える

看取りの話を入所のときにするのは、切り出しにくい部分です。一方で、後から始めるほうが難しくなります。

施設としてどこまでできるかを、事実として伝えます。そのうえで、いま決める必要はないことも伝えます。

先に伝えておくと、後から話を持ちかけやすくなります。

状態が変わったら場を持つ

食事が取れなくなった、入院から戻った、意思の疎通が難しくなった。こうした変化があったときに、話し合いの場を持ちます。

そのうえで、医師や看護職にも入ってもらいます。医学的な見通しがあると、家族も判断しやすくなります。

介護の側だけで説明すると、答えられないことが出てきます。

意向が分かれたら両方残す

家族の間で意見が分かれることがあります。どちらかに寄せて記録すると、後から問題になります。

それぞれの意見を、そのまま残します。そのうえで、誰がどう言ったかも書いておきます。

分かれていること自体が、調整が要るという情報になります。

介護の看取りの記録に残すこと

介護の看取りに関する指針では、記録として何を残すかも決めておきます。記録は、経過を残すことと家族に伝える材料の両方になります。何を残すかを、指針で決めておきます。

  • 説明と同意の経緯 5日付と相手と内容
  • 本人の意思 5言葉のまま
  • 日々の状態 2食事と水分と表情
  • 医療との連絡 2時刻と内容
  • ケアの内容 2行ったことと反応
看取りの記録として残すものと、重みの目安

上の2つは、加算の要件にも関わります。そのうえで、下の3つは日々の記録として積み重ねます。

説明した日付と相手を残す

いつ、誰に、何を説明したか。そのうえで、誰が説明したかも書きます。

同意書に署名をもらった日だけでなく、説明の経過も残します。1回の説明で決めた形になっていると、経緯が示せません。

説明のたびに1行ずつ足していく形にします。

日々の様子を家族に伝える材料にする

家族が毎日来られるとは限りません。そのため、日々の様子を伝える材料が要ります。

今日は目を開けていた、声かけに反応があった、少し水分が取れた。そのうえで、家族が来たときに読んでもらう形もあります。

離れていても、経過が分かると受け止め方が変わります。

ケアの内容と反応を残す

口腔ケアをした、体位を変えた、音楽をかけた。行ったことと、そのときの反応を残します。

行ったことと反応を残すと、次のケアが決まります

介護の看取りで医療とどう連携するか

看取りの場面では、医療との連携が欠かせません。平時に取り決めておかないと、その場では動けません。

平時に決めておくこと

  • 協力医療機関との取り決め
  • 時間帯ごとの連絡先
  • 往診の可否と条件
  • 看護職の配置と役割

看取りの場面で行うこと

  • 状態の変化を伝える
  • 指示を受けて記録する
  • 家族への連絡の順序
  • 亡くなったときの手順
平時の取り決めがないと、場面で動けない

左が準備、右が実際の動きです。そのうえで、左が整っていないと右が進みません。

時間帯ごとの連絡先を決める

日中は診療所、夜間は当直、休日は別の窓口。時間帯ごとに連絡先を書いておきます。

そのうえで、つながらなかった場合の次の手も決めておきます。救急要請するのか、別の医療機関に連絡するのか。

判断の基準を書いておくと、その場で迷いません。

看護職の役割を書く

看護職がどこまで判断できるかを、指針に書きます。医師への連絡の基準、家族への説明の範囲。

そのうえで、看護職が不在の時間帯の扱いも決めます。訪問看護と連携している場合は、その連絡先も書きます。

役割が決まっていると、介護職員も動きやすくなります。

亡くなったときの手順を決める

亡くなったときに何をするかを、順に書いておきます。医師への連絡、家族への連絡、他の利用者への配慮。

そのうえで、死亡診断書の取り扱いや、搬送の手配も含めます。葬儀社との連絡について、家族の希望を事前に聞いておく形もあります。

慌ただしい場面なので、書いてあると助かります。

夜間に起きた場合の手順も、別に書いておきます。夜勤者が1人の場合、できることが限られます。

そのうえで、応援を呼ぶ基準も決めておきます。

介護の看取りの後に職員をどう支えるか

看取りの後、職員に残るものがあります。「もっとできたのではないか」という気持ちが出ることがあります。

  1. 1 看取りの直後 手を止めて話す時間
  2. 2 振り返りの場 数日のうちに
  3. 3 記録の共有 何ができたか
  4. 4 相談の窓口 個別に話せる先
  5. 5 次に生かす 手順の見直し
直後と数日後の2回、話す場を作る

直後と数日後の2回、場を作る形にします。そのうえで、個別に相談できる先も用意しておきます。

直後に話す時間を取る

亡くなった後、そのまま通常の業務に戻ることがあります。気持ちの整理がつかないまま、次の対応に移る形です。

短い時間でも、手を止めて話す場を作ります。そのうえで、その日に関わった職員が集まれる時間にします。

長い時間は要りません。10分でも変わります。

振り返りは反省会にしない

数日のうちに、振り返りの場を持ちます。このとき、できなかったことを挙げる場にしないようにします。

何ができたか、本人や家族の様子はどうだったか。そのうえで、次に生かせることがあれば拾います。

反省会にしないと、次も話せる場になります。

責める形になると、次から発言が出なくなります。そのうえで、看取りに関わることを避ける職員も出てきます。

進め方を決めておくと、場の性格が保てます。

個別に相談できる先を示す

みんなの前では話せないこともあります。個別に相談できる先を示しておきます。

管理者、法人の相談窓口、外部の相談先。そのうえで、相談したことで評価に影響しないことも伝えます。

看取りに立ち会うことは、経験を重ねても軽くなりません。

新しく入った職員には、事前に説明しておきます。どういう場面があるか、どう対応するか。

そのうえで、初めて立ち会うときは1人にしないようにします。

介護の看取りに関する指針を年に1回見直す

介護の看取りに関する指針は、作った時点の体制で書かれています。実際に看取りを経験すると、書いていなかったことが見つかります。

  • 振り返り実際の場面で出た課題
  • 体制職員と医療の変化
  • 要件加算の改定
3つの観点で、年に1回見直す

3つを確認して、指針に反映します。そのうえで、見直した記録も残しておきます。

振り返りの記録を材料にする

看取りのたびに行った振り返りの記録を、集めて見ます。同じ課題が繰り返されていれば、指針に手を入れる部分です。

連絡の経路が分かりにくかった、夜間の対応で迷った。そのうえで、具体的にどう直すかを決めます。

記録がないと、記憶に頼ることになります。

協力医療機関の変更を反映する

協力医療機関が変わることがあります。医師が交代したり、連絡先が変わったりもします。

そのため、年に1回は連絡先を確認します。そのうえで、取り決めの内容も確認します。

古い連絡先のままだと、当日につながりません。

加算の要件を確認する

介護報酬の改定で、加算の要件が変わることがあります。指針に書いた内容が、要件と合わなくなることもあります。

そのため、改定のたびに確認します。そのうえで、必要な項目が抜けていないかを見ます。

自治体から示される資料も、あわせて確認します。

様式は看取りに関する指針テンプレートからダウンロードできます。日々の記録は介護記録(ケース記録)にまとめています。

よくある質問

看取りに関する指針はどの事業所に必要ですか。

看取り介護加算やターミナルケア加算を取る場合の要件として求められる形になっています。加算を取らない事業所でも、最期まで暮らす場になっている施設では指針を持っている例が多くあります。要件は改定で変わるため、その時点の告示で確認しておくと安心です。

本人の意思をどう確かめるのですか。

元気なうちから繰り返し話しておく形が広く使われています。1回で決めるのではなく、状態が変わるたびに確かめ直します。話した内容と日付を記録に残し、本人の言葉のまま書いておくと、後から家族と共有できます。

家族の意向と本人の意思が違う場合はどうしますか。

両方を記録に残したうえで、話し合いの場を持つ形が扱いやすくなります。どちらかに寄せて記録すると、後から経緯が読み取れません。医療の側も含めた話し合いを繰り返すことが、意思決定の支援として位置づけられています。

関連するテンプレート

関連する記事