介護の法定三帳簿|労働者名簿と賃金台帳と出勤簿
公開 2026年9月3日
目次8項目
- 1介護の法定三帳簿は3つの帳簿をまとめた呼び名
- 介護では指定の要件にも関わる
- シフト勤務で欄が足りなくなる
- 処遇改善の届出でも使う
- 2介護の法定三帳簿の1つ目は労働者名簿
- 資格の欄を足しておく
- 配置した事業所を残す
- 退職したあとも消さずに残す
- 3介護の法定三帳簿の2つ目は賃金台帳
- 夜勤の回数と手当を分けて書く
- 手当の内訳を1つずつ立てる
- 締めと支払日を固定する
- 4介護の法定三帳簿の3つ目は出勤簿
- 夜勤が日をまたぐ書き方を決める
- 勤務の区分の欄を足す
- 休憩の実際の時間を残す
- 5介護の法定三帳簿と勤務形態一覧表のつなぎ方
- 予定と実績を分けて残す
- 一覧表の時間と突き合わせる
- 数字の出どころを1つにする
- 6介護の法定三帳簿の保存期間
- 起算日を帳簿に書き込む
- 介護の記録と分けて保管する
- 電子で保存するときは取り出せる形にする
- 7介護の法定三帳簿で対象になる人の切り分け
- 派遣の職員は自社では作らない
- 短時間のパートも名簿に載せる
- 実習生と職員を分けて扱う
- 判断の基準を一覧にする
- 8介護の法定三帳簿を月次で回す形にする
- 現場からの提出期限を決める
- 差が出た月に原因を確かめる
- 担当を決めて引き継ぎの手順を書く
法定三帳簿は、労働基準法が求める帳簿です。どの業種でも同じものが必要になりますが、介護には介護なりの事情があります。夜勤が日をまたぐこと、勤務形態一覧表と数字がつながること。
一般には、労働者名簿、賃金台帳、出勤簿の3つを別に持ちます。労務のための帳簿が、指定の要件を確かめる資料にもなります。
とはいえ、一般的な様式のままだと、シフト勤務では欄が足りません。夜勤の回数や、勤務の区分を書く場所がないためです。
ポイントはここです。介護の法定三帳簿は、指定の要件を裏づける資料としても使われます。
ここでは、3つの帳簿それぞれの中身と、勤務形態一覧表とのつなぎ方、保存期間、そして月次で回す形までを順に整理します。
介護の法定三帳簿は3つの帳簿をまとめた呼び名
介護の法定三帳簿は、労働者名簿、賃金台帳、出勤簿の3つを指します。それぞれが受け持つ範囲が分かれています。
- 労働者名簿誰を雇っているか
- 賃金台帳いくら払ったか
- 出勤簿いつ働いたか
3つを別に持ち、氏名でつながる形にしておきます。
介護では指定の要件にも関わる
介護事業所では、職種ごとの配置が指定の要件になっています。その配置を裏づけるのが、出勤簿と勤務形態一覧表です。
労務の帳簿が、指定の要件の裏づけにもなります。
シフト勤務で欄が足りなくなる
一般的な出勤簿は、日勤を前提に作られています。始業と終業の欄が1組ずつしかありません。
夜勤が日をまたぐと、この形では書けません。そのうえで、勤務の区分を書く欄も必要になります。
介護向けの様式を使うか、欄を足して使います。
処遇改善の届出でも使う
介護職員処遇改善加算などの届出では、賃金の内訳を示すことになります。どの手当が処遇改善の原資から出ているかが問われます。
そのため、賃金台帳で手当を分けて書いておく必要があります。そのうえで、加算の額と支給の額が対応する形にします。
まとめて「諸手当」と書いていると、届出のたびに内訳を作り直すことになります。
計画書と実績報告書の両方で、同じ数字を使います。そのうえで、台帳から直接拾える形にしておくと作業が短くなります。
介護の法定三帳簿の1つ目は労働者名簿
介護の法定三帳簿の1つ目は、雇っている人の情報を残す労働者名簿です。雇入れから退職まで、書き足していく形になります。
- 1 雇用契約 契約書を交わす
- 2 名簿に登録 雇入れの日を記入
- 3 資格を追記 取得のつど足す
- 4 異動を記入 配置が変わったとき
- 5 退職時 年月日と事由を記入
入社のときに作って、そのままになりがちです。そのうえで、途中の変化を書き足していく形にします。
| 項目 | 内容 | 介護での書き方 |
|---|---|---|
| 氏名・生年月日 | 本人を特定する情報 | 住民票の表記に合わせる |
| 住所 | 現住所 | 転居時に更新する |
| 履歴 | 社内の異動や職歴 | 配置した事業所を残す |
| 従事する業務の種類 | 担当する仕事 | 職種名で書く |
| 雇入れの年月日 | 雇用を始めた日 | 契約書と一致させる |
| 退職の年月日と事由 | 退職時に記入 | 保存期間の起算日になる |
右の列は、介護で気をつける点です。そのうえで、職種名は指定の要件で使う区分に合わせます。
資格の欄を足しておく
法定の項目には資格が入っていませんが、介護では欄を足しておくと使えます。介護福祉士、初任者研修、実務者研修、看護師。
そのうえで、取得した年月日も書いておきます。処遇改善加算や、職種の配置を確かめるときの材料になります。
資格証の写しの保管場所も、欄に書いておくと探せます。
配置した事業所を残す
法人内に複数の事業所がある場合、異動があります。どこにいつからいたかを、履歴の欄に残します。
配置の履歴が残っていると、過去の体制を後から示せます。
退職したあとも消さずに残す
退職した職員の名簿を、その場で処分しないようにします。保存期間が定められているためです。
そのうえで、在職者と分けて保管します。混ざっていると、現在の職員数が数えにくくなります。
退職の年月日が、保存期間の起算日になります。
介護の法定三帳簿の2つ目は賃金台帳
介護の法定三帳簿の2つ目は、支払った賃金の内訳を残す賃金台帳です。介護では、夜勤手当や処遇改善の手当を分けて書く必要があります。
上の2つが、法令上も実務上も中心になります。そのうえで、介護では夜勤の欄が要ります。
夜勤の回数と手当を分けて書く
夜勤手当をまとめて「手当」に入れると、回数が分かりません。夜勤専従の職員がいる場合、回数の管理も必要になります。
そのため、回数と手当の額を別の欄にします。そのうえで、出勤簿の夜勤の回数と突き合わせられる形にします。
数が合わないときに、どちらが正しいかを確かめられます。
手当の内訳を1つずつ立てる
役職手当、資格手当、夜勤手当、処遇改善手当。まとめずに、1つずつ欄を立てます。
処遇改善の手当を分けて書くと、届出の作業が短くなります。
締めと支払日を固定する
賃金計算期間と支払日を、台帳に書いておきます。月の途中で入社した人の計算も、この期間を基準にします。
そのうえで、締めの日を変えないようにします。変えると、過去との比較ができなくなります。
就業規則にも同じ内容を書いておきます。
介護の法定三帳簿の3つ目は出勤簿
出勤簿は、いつ働いたかを残す帳簿です。介護では、夜勤があるため一般的な様式では足りません。
- 始業と終業の時刻が入っているか はい次へ いいえ時刻欄を足す
- 勤務の区分が分かるか はい次へ いいえ早番・遅番・夜勤の欄を足す
- 休憩の時間が分かるか はい次へ いいえ休憩欄を足す
- 夜勤の明けの扱いが決まっているか はい出勤簿として使える いいえ2日にまたぐ書き方を決める
夜勤が日をまたぐため、書き方を決めておく必要がある
決めていないと、労働時間の集計が人によって変わります。
夜勤が日をまたぐ書き方を決める
16時から翌9時までの夜勤を、どちらの日として書くか。始業した日に全部書く形と、日ごとに分ける形があります。
どちらでも構いませんが、事業所で1つに決めます。そのうえで、出勤簿の欄外に書いておきます。
決まっていると、集計する人が迷いません。
勤務の区分の欄を足す
早番、日勤、遅番、夜勤、夜勤明け。区分の欄があると、シフト表と突き合わせられます。
そのうえで、記号で書ける形にしておきます。時刻と区分が両方あると、変更があったときも分かります。
区分ごとの時間を定義しておくと、集計が早くなります。
休憩の実際の時間を残す
介護では、休憩が予定どおりに取れないことがあります。呼ばれて中断した、時間をずらして取った。
予定の休憩時間を一律に引くと、実態と合いません。そのうえで、労働時間が短く出ることになります。
実際に取れた時間を書ける欄を設けておきます。
取れなかった場合の扱いも決めておきます。別の時間に取る、労働時間として扱う。
そのうえで、決めた内容を就業規則に書いておきます。
介護の法定三帳簿と勤務形態一覧表のつなぎ方
出勤簿は、賃金計算だけでなく常勤換算の出どころにもなります。2つの用途で同じ数字を使う形にすると、食い違いが起きません。
- 1 シフト表 予定を組む
- 2 出勤簿 実際の勤務を残す
- 3 勤務形態一覧表 常勤換算を出す
- 4 指定の要件 配置を満たすか
- 5 賃金台帳 賃金を計算する
出勤簿から2つの方向へ分かれる形になります。そのうえで、どちらも同じ数字から出ていることが大事な部分です。
予定と実績を分けて残す
シフト表は予定、出勤簿は実績です。2つを1枚にまとめると、どちらか分からなくなります。
そのため、別の紙で持ちます。そのうえで、変更があった場合は出勤簿のほうを正とします。
シフト表を後から書き換えると、予定が残りません。
一覧表の時間と突き合わせる
勤務形態一覧表の時間が、出勤簿と合っているかを確認します。実地指導では、この2つを突き合わせて見られます。
月ごとに突き合わせておくと、実地指導で慌てません。
数字の出どころを1つにする
同じ職員の勤務時間が、書類によって違うことがあります。それぞれ別に入力していると起こります。
出勤簿を出どころにして、そこから他の書類を作る形にします。そのうえで、修正があったときは出勤簿から直します。
出どころが1つだと、食い違いが起きません。
介護の法定三帳簿の保存期間
3つの帳簿には、それぞれ保存期間が定められています。年数は同じでも、起算日が違います。
介護の記録は、労務の帳簿とは別の系統になります。そのため、年数も起算日も違います。
起算日を帳簿に書き込む
退職した職員の名簿に、保存の期限を書いておきます。「保存期限 2029年3月」という形です。
そのうえで、年ごとにファイルを分けます。期限が来たファイルから処分できます。
書いていないと、処分の判断のたびに計算することになります。
介護の記録と分けて保管する
労務の帳簿と、介護の記録は保存期間が違います。同じ棚に入れていると、処分の判断がつきません。
そのため、置き場所を分けます。そのうえで、それぞれの棚に期間を書いた紙を貼っておきます。
調査で求められる場面も違うため、分けておくと出しやすくなります。
電子で保存するときは取り出せる形にする
帳簿を電子で持つ場合、求められたときに出せることが前提です。労働基準監督署の調査や、実地指導で提示することになります。
そのうえで、人ごとに絞り込める形にしておきます。全期間の全職員分を印刷すると、必要な部分が埋もれます。
アクセスできる人も決めておきます。
介護の法定三帳簿で対象になる人の切り分け
3つの帳簿は、雇用している人について作ります。事業所に出入りしている人の全員が対象になるわけではありません。
3つとも作る人
- 常勤の職員
- 短時間のパート職員
- 有期契約の職員
- 雇用契約を結んでいる人
自社では作らない人
- 派遣で来ている職員
- 業務委託の相手
- 実習生(雇用でない場合)
- ボランティア
左は、自社が雇用している人です。一方で右は、雇用の関係がない人になります。
派遣の職員は自社では作らない
派遣で来ている職員は、派遣元が雇用しています。そのため、労働者名簿や賃金台帳は派遣元が作ります。
一方で、就業の記録は派遣先でも残します。そのうえで、常勤換算に含めるかどうかも確認が要ります。
サービスの種類によって、扱いが変わることがあります。
短時間のパートも名簿に載せる
週に1回だけ来るパート職員も、雇用契約を結んでいれば対象です。「短時間だから」という理由で外れることはありません。
繰り返し来てもらっている場合は、載せておくほうが安全です。
実習生と職員を分けて扱う
実習生は、雇用契約を結んでいなければ対象になりません。一方で、実習と並行してアルバイトとして雇う場合は対象になります。
そのため、どういう関係で来ているかを整理しておきます。そのうえで、実習生の受入れ記録は別に残します。
秘密保持の誓約書は、どちらの場合も取ります。
判断の基準を一覧にする
誰について3つを作るのかを、一覧にしておきます。新しく人が入るたびに、判断することになるためです。
そのうえで、迷った場合の相談先も決めておきます。社会保険労務士や、労働基準監督署に確認できます。
一覧があると、担当が代わっても判断がそろいます。
介護の法定三帳簿を月次で回す形にする
介護の法定三帳簿は、月ごとに閉じる形にすると滞りません。賃金計算のときにまとめて集める形だと、そのたびに時間がかかります。
月次で回す形
- 出勤簿を月末に閉じる
- 賃金台帳へ転記
- 一覧表と突き合わせる
- 差は当月中に直す
滞る形
- 出勤簿が現場に残る
- 賃金計算のときに集める
- 一覧表は指導の前に作る
- 差の原因が分からない
左は、毎月30分程度の作業になります。一方で右は、必要になったときに数日分の作業が発生します。
現場からの提出期限を決める
出勤簿が現場に残ったままだと、締められません。月末の翌営業日まで、といった期限を決めます。
そのうえで、誰が集めるのかも決めておきます。待っているだけだと、集まらない月が出ます。
期限を決めると、給与計算の日程も安定します。
差が出た月に原因を確かめる
出勤簿と一覧表の数字が合わない月があります。その月のうちに原因を確かめます。
急な欠勤、代替の出勤、シフトの変更。そのうえで、どちらが正しいかを決めて直します。
後から確かめると、記憶が残っていません。
担当を決めて引き継ぎの手順を書く
3つの帳簿を誰が管理するのかを決めます。そのうえで、手順を1枚にまとめておきます。
出勤簿の締め方、賃金台帳への転記、名簿の更新の時期。担当が代わっても、同じ形で続けられます。
小さい事業所では1人が全部を見ていることが多く、その人が休むと止まります。
様式は労働者名簿テンプレート、賃金台帳、出勤簿からダウンロードできます。
よくある質問
法定三帳簿は事業所ごとに備えるのですか。
事業場ごとに備える形が原則になっています。複数の事業所を運営している法人では、賃金の計算を本部でまとめている場合があり、その場合は本部に備えている例が多くあります。実地指導では事業所での確認を求められることがあるため、写しを置いておく形が扱いやすくなります。
常勤換算の計算に出勤簿を使いますか。
勤務形態一覧表を作るときに、実際の勤務時間の裏づけとして使われます。一覧表に書いた時間と出勤簿が食い違うと、指定の要件を満たしているかが確認できません。同じ数字になっているかを月ごとに突き合わせておくと安心です。
短時間のパート職員も労働者名簿に載せますか。
雇用契約を結んでいる人であれば載せる形になります。日々雇い入れる人は対象から外れる扱いですが、繰り返し来てもらっている場合は実態として継続雇用に近づきます。判断に迷う場合は載せておくほうが安全です。