介護の苦情処理簿|受付から解決までの記録

公開 2026年9月3日

目次8項目

家族から言われたことを、その場で答えて終わりにする。悪気なくそうしていると、同じことが何度も繰り返されます。言われた職員だけが覚えていて、事業所としては何も残らない状態です。

一般には、受け付けた内容と対応、そして結果までを帳簿に残します。記録に残すと、個人が抱える形から抜けられます

とはいえ、どこからが苦情なのかという線引きで止まることがあります。

ポイントはここです。介護の苦情処理簿は、個人が抱えないで組織で受けるための帳簿になります

ここでは、何を残す帳簿なのか、書く項目、受け付けたときの動き、そして再発の防止につなげるところまでを順に整理します。

介護の苦情処理簿とは何を残す帳簿か

介護の苦情処理簿は、利用者や家族から寄せられた苦情の経過を残す帳簿です。運営基準で、記録の作成と保存が求められています。

  • 受付いつ誰が何を聞いたか
  • 対応誰が何をしたか
  • 結果相手にどう伝えたか
苦情処理簿は、受付・対応・結果の3つを残す

結果まで書いておくと、同じ苦情が繰り返されているかが分かります。

個人が抱えない形にする

苦情を聞いた職員が1人で対応しようとすると、判断が個人に寄ります。その場を収めることが目的になり、原因に手が入りません。

帳簿に書く形にすると、個人の判断で終わりません

繰り返しに気づける

同じ内容の苦情が、時期を空けて繰り返されることがあります。1件ずつ対応していると、繰り返しに気づけません。

記録が残っていると、前にも同じことがあったと分かります。そのうえで、その場の対応ではなく仕組みに手を入れる判断ができます。

繰り返しているものほど、原因が構造の側にあります。

調査が入ったときに示せる

市町村や国保連から調査が入ることがあります。そのときに、どう対応したかを示す資料になります。

対応していても、記録がなければ示せません。そのうえで、記録が時系列で残っていると経過が伝わります。

後から作った記録は、内容の精度が落ちます。

介護の苦情処理簿に書く項目

介護の苦情処理簿は、受付から再発の防止までを1枚で追える形にします。別々の紙に分かれていると、経過が読み取れません。

  1. 1 受付 日時と相手と内容
  2. 2 報告 責任者へ上げる
  3. 3 事実の確認 記録と職員から
  4. 4 対応の決定 何をするか
  5. 5 相手へ回答 伝えた内容
  6. 6 再発の防止 仕組みを直す
受付から再発の防止までを1枚で追う

この6つが1枚にあると、どこまで進んだかが分かります。そのうえで、途中で止まっている案件も見つかります。

項目内容書き方の目安
受付の日時いつ聞いたか分まで書く
受け付けた人誰が聞いたか氏名を書く
申出人誰からか本人・家族・関係者
内容何についてか言葉をそのまま残す
事実の確認記録と職員から確認した相手も書く
対応何をしたか日付を添える
回答相手に伝えた内容伝えた日と方法
再発の防止仕組みの見直し担当と期限

右の列は、書くときの目安です。そのうえで、最後の再発の防止に担当と期限を入れておきます。

言葉をそのまま残す

聞いた内容を要約して書くと、受け取り方が入ります。「対応が悪いと言われた」だと、何が問題だったか分かりません。

「呼んでもすぐ来てくれない、と言われた」という形で残します。そのうえで、そのときの様子も書いておきます。

言葉が残っていると、後から読む人が判断できます。

要約するのは、事実の確認が済んでからにします。そのうえで、要約と元の言葉を両方残しておくと確実です。

読み違いがあったときに、元に戻れます。

匿名の申出も記録する

名乗らずに電話がかかってくることがあります。「相手が分からないから記録しない」という扱いにしないようにします。

内容そのものは、事実である可能性があります。そのうえで、同じ内容が複数回来ているかも分かります。

申出人の欄に「匿名」と書いて、内容を残します。

事実の確認の相手を書く

苦情の内容について、誰に確認したかを書きます。その日の担当職員、記録、他の職員。

確認した相手を書いておくと、判断の根拠が残ります

介護の苦情を受け付けたときの動き

苦情を受け付けたときは、その場で答えるかどうかを判断します。答えられないことは、期限だけ伝えて持ち帰ります。

  1. その場で事実が確認できるか はい確認して答える いいえ次へ
  2. 回答の期限を伝えたか はい次へ いいえいつまでに答えるか伝える
  3. 責任者に報告したか はい次へ いいえその日のうちに上げる
  4. 帳簿に書いたか はい組織で受けた形になっている いいえその場で書く

その場で答えられないことは、期限だけ伝えて持ち帰る

苦情を受け付けたときの順序

期限を伝えておくと、相手も待てます

その場で判断しない

その場を収めようとして、確認していないことを答えてしまうことがあります。後から違っていた場合、信頼を失います。

そのため、確認できることと、できないことを分けます。分からないことは「確認してお答えします」と伝えます。

謝るかどうかも、事実が分かってから判断します。

回答の期限を伝える

「確認します」だけだと、相手はいつまで待てばよいか分かりません。連絡がないまま日が過ぎると、不信につながります。

「明日中にご連絡します」と期限を伝えます。そのうえで、期限までに答えが出ない場合も連絡を入れます。

途中経過だけでも伝えると、放置されていない感覚になります。

その日のうちに責任者へ上げる

受け付けた職員が、その日のうちに責任者へ報告します。翌日に回すと、対応が遅れます。

そのうえで、報告した時刻も記録に残します。組織として受けた時点が分かります。

夜間や休日の場合の連絡先も決めておきます。

報告しにくい内容ほど、上がるのが遅れます。自分の対応について言われた場合は、特にそうです。

そのため、報告したことで責められない形にしておきます。報告が早いほど、対応の選択肢が増えます。

介護の苦情解決の仕組みで置く担当

苦情解決の仕組みでは、受け付ける人と決める人を分けます。同じ人が兼ねると、対応が個人の判断になります。

苦情受付担当者

  • 苦情を受け付ける
  • 内容を記録する
  • 責任者へ報告する
  • 相手との窓口になる

苦情解決責任者

  • 対応を決める
  • 相手へ回答する
  • 第三者委員へ報告する
  • 再発の防止を進める
受け付ける人と決める人を分けておく

左が入口、右が判断する側です。そのうえで、それぞれの氏名を掲示に載せます。

第三者委員を置く

苦情解決の仕組みには、第三者委員を置くことが求められています。事業所の外の人に、公正な立場で関わってもらう形です。

民生委員、社会福祉士、地域の関係者。そのうえで、利用者が直接相談できる連絡先も伝えます。

事業所を通さずに相談できることが、この仕組みの意味になります。

名前を掲示と重要事項説明書に載せる

苦情の窓口は、掲示だけでは見られないことがあります。重要事項説明書にも同じ内容を載せます。

窓口を両方に載せておくと、相談する先が分かります

契約のときに説明する場面でも、この部分に触れます。そのうえで、言いにくいことも言ってよいと伝えます。

伝えておくと、後から相談が出やすくなります。

人が代わったら差し替える

担当者や責任者が代わると、掲示の内容が古くなります。第三者委員が交代することもあります。

そのため、人事の異動があったときに掲示を確認する流れにします。そのうえで、重要事項説明書も直します。

片方だけ直すと、内容が食い違います。

介護の苦情解決の仕組みをどう掲示するか

掲示は、読まれてはじめて意味を持ちます。何を載せるかと、どこに貼るかの両方が関わります。

  • 受付の窓口 5担当者名と電話番号
  • 解決の責任者 4氏名と役職
  • 第三者委員 4氏名と連絡先
  • 外部の相談先 4市町村と国保連
  • 手順 3受付から回答まで
掲示に載せる内容と、読まれる度合いの目安

いちばん上の受付の窓口が、最初に見られる部分です。そのうえで、外部の相談先も載せておきます。

外部の相談先も載せる

事業所の中の窓口だけだと、言いにくい場合があります。市町村の担当課、国民健康保険団体連合会の窓口。

これらを載せておくと、相談する先が広がります。そのうえで、載せること自体が事業所の姿勢を示します。

外部に相談されることを避けようとすると、内側で溜まります。

外部から連絡が来た場合も、同じように記録します。そのうえで、市町村や国保連の調査には協力します。

隠そうとすると、問題が大きくなります。

読める場所と大きさにする

掲示板の隅に小さく貼ってあると、読まれません。玄関や待合の見える場所に、読める大きさで貼ります。

そのうえで、高齢の方が読める文字の大きさにします。細かい字だと、見えても読めません。

内容も、専門的な言葉を使わない形にします。

重要事項説明書と内容をそろえる

掲示と重要事項説明書で、担当者名が違うことがあります。片方だけを更新したときに起こります。

そのため、更新のタイミングをそろえます。そのうえで、どちらも確認する手順を決めておきます。

契約書の内容とも食い違わないようにします。

介護の苦情処理簿を再発の防止につなげる

1件ごとの対応だけでは、同じことが繰り返されます。分類して傾向を見る段を置くと、仕組みに手が入ります。

  1. 1 1件ごとの対応 受付から回答まで
  2. 2 分類 内容の種類で分ける
  3. 3 傾向を見る 多い種類を拾う
  4. 4 仕組みを直す 手順や体制
  5. 5 委員会で共有 職員へ周知
1件ごとの対応の上に、傾向を見る段を置く

2つ目の分類が、傾向を見るための下地になります。そのうえで、月ごとに数えると変化が分かります。

内容を分類する欄を作る

苦情処理簿に、内容の分類を書く欄を設けます。サービスの内容、職員の対応、費用、環境、その他。

分類があると、月ごとに数えられます。そのうえで、多い種類が見えてきます。

分類は、自事業所で起きやすいものに合わせて決めます。

職員の対応に関わるものは研修につなげる

言葉づかい、対応の遅れ、説明の不足。こうした苦情は、個人の問題として扱われがちです。

個人を責めるより研修の題材にすると、次につながります

委員会で共有する

苦情の内容を、委員会で共有します。個人が特定されない形にして、何が起きたかを伝えます。

そのうえで、どう防ぐかを話し合います。決まったことは、手順やマニュアルに反映します。

共有されないと、他の職員が同じことを繰り返します。

介護の苦情処理簿でつまずきやすいところ

介護の苦情処理簿でつまずくのは、書く基準と、結果を書くところです。どちらも、決めておくことで解決します。

  1. 書く基準を決めているか はい次へ いいえ迷ったら書くと決める
  2. 受けた職員がその場で書けるか はい次へ いいえ用紙を現場に置く
  3. 結果まで書いているか はい次へ いいえ回答の欄を埋める
  4. 分類して傾向を見ているか はい回っている状態 いいえ委員会の議題にする

迷ったら書くと決めておくと、線引きで止まらない

苦情処理簿が回っているかの確認

4つのうち、最初の基準がいちばん手前にあります。そのうえで、線引きで止まると記録そのものが残りません。

迷ったら書くと決めておく

どこからが苦情かを厳密に決めようとすると、判断で止まります。「意見」なのか「苦情」なのかで悩むことになります。

迷ったら書くと決めておくと、判断に時間を使いません

用紙を現場に置く

事務室にしか用紙がないと、その場で書けません。時間が経つと、言葉が正確に残りません。

そのため、各フロアやステーションにも置いておきます。そのうえで、置き場所を職員に伝えます。

その場で書ければ、受けた言葉がそのまま残ります。

対応の途中でも書き足す

苦情の対応は、数日にわたることがあります。すべて終わってから書こうとすると、経過が抜けます。

受け付けた時点で1行書き、対応するたびに書き足します。そのうえで、日付を添えます。

途中経過が残っていると、対応の速さも分かります。

対応中の案件が分かる形にしておくと、放置されません。そのうえで、期限を過ぎているものを拾えます。

未完了の欄に印を付けておく方法があります。

件数を月ごとに数える

月ごとに、受け付けた件数と分類を数えます。数分で済む作業です。

そのうえで、前の月と比べます。増えている分類があれば、そこに原因があります。

数えていないと、傾向が見えません。

介護の苦情処理簿の保管と調査への備え

介護の苦情処理簿は、一定期間の保存が求められます。関係する記録と一緒にまとめておくと、調査のときに出せます。

  • 苦情処理簿 5年 運営基準の書類に合わせる
  • 介護記録 5年 完結の日から
  • 事故の記録 5年 市町村への報告も
  • 委員会の記録 5年 同じ棚にまとめる
どれも同じ年数なので、まとめて1か所に置ける(自治体の定めで違う場合がある)

年数は、指定を受けている自治体の定めを確認します。そのうえで、関係する記録は同じ場所にまとめます。

関係する記録をまとめる

苦情の内容によっては、事故の記録や介護記録とつながります。1つの案件について、複数の記録が残ることになります。

そのため、案件ごとに関係する記録を参照できる形にします。苦情処理簿に、関係する記録の名前と日付を書いておきます。

調査で求められたときに、集める時間が短くなります。

保管の年数を自治体で確認する

保存の年数は、自治体によって定めが違うことがあります。指定を受けている自治体の条例や要綱を確認します。

そのうえで、長いほうに合わせておくと安全です。複数の自治体で指定を受けている場合は、それぞれ確認します。

年度ごとにファイルを分けておくと、処分の判断がつきます。

個人情報として扱う

苦情処理簿には、申出人の氏名や、利用者の状況が入ります。個人情報として扱う必要があります。

そのため、鍵のかかる場所に保管します。そのうえで、開ける人を決めておきます。

委員会で共有するときは、個人が特定されない形にします。

様式は苦情処理簿テンプレート、掲示は苦情解決の仕組みからダウンロードできます。

よくある質問

苦情処理簿はすべての苦情を書くのですか。

受け付けた苦情を記録に残す形が求められています。小さな要望との線引きに迷う場面がありますが、迷ったら書いておくほうが後で困りません。書く基準を事業所で決めて、様式の欄外に書いておくと担当が代わっても判断がそろいます。

第三者委員は必ず置くのですか。

苦情解決の仕組みを示した指針で、第三者委員の設置が示されています。義務として明記されているわけではありませんが、公正さを保つ仕組みとして置いている事業所が多くあります。置く場合は氏名と連絡先を掲示に載せます。

市町村や国保連から調査が来ることはありますか。

利用者や家族が市町村や国民健康保険団体連合会に相談した場合、調査や指導が入ることがあります。事業所には協力が求められる形になっています。苦情処理簿に受付から対応までが残っていると、経緯をそのまま示せます。

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